スリランカと歩んだ35年。『午後の紅茶』が創造する持続可能な未来

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2021年08月05日

  • スリランカと歩んだ35年。『午後の紅茶』が創造する持続可能な未来

発売開始から35周年を迎えた『午後の紅茶』。キリンビバレッジは、100年後も愛されるブランドであり続けるために、ブランド戦略とCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)戦略の融合による『パーパス・ブランディング』の進化を、このブランドを通じて実現させようとしています。

味わいの根幹を担う、紅茶葉。『午後の紅茶』では、発売開始当初からスリランカ産の紅茶葉を使用しており、スリランカと私たちの関係も35周年を迎えました。『キリン スリランカフレンドシッププロジェクト』の活動は、私たちのCSVの象徴でもあります。

『午後の紅茶』を通じ、どのような活動に取り組み、活動の先に何を目指すのか。スリランカと『午後の紅茶』が歩んできた35年間を振り返るとともに、私たちが創りたい未来についてお届けします。

『午後の紅茶』とスリランカのwin-winなつながり

紅茶は本来、冷やすと濁る性質を持つため、見た目にもおいしい紅茶飲料を作るのは至難の業。当時の開発チームは度重なる試行錯誤の末に液色を透明に保つ技術を編み出し、『午後の紅茶』は1986年に日本初のペットボトル入り紅茶として、好調なスタートを切りました。

こうした技術と同時に『午後の紅茶』のヒットを支えたのが、味わいの根幹を担う紅茶葉です。発売当時、『午後の紅茶』の開発者が注目したのが、わずか北海道の約0.8倍の大きさであるスリランカの紅茶葉でした。スリランカは、小さな国土ながら標高差に富んだ地形が特徴であり、その標高の違いが紅茶葉の味わいに変化をもたらします。スリランカ産紅茶葉の品質はもちろんのこと、産地による味のバリエーションに大きな可能性を確信し、スリランカと『午後の紅茶』の関係がスタートしたのです。

『午後の紅茶』の製造量が増えるごとに調達する紅茶葉の量も増え、日本における紅茶葉の輸入量にも影響を及ぼし始めました。『午後の紅茶』発売前の1985年と発売後の1990年の5年間では、日本がスリランカから輸入する紅茶葉の量は約1.5倍、2000年までの15年間では約2.3倍にまで増加しました。(出典:日本紅茶協会)2018年では日本が輸入するスリランカ産紅茶葉のうち、約24%(※キリンビバレッジ調べ)を『午後の紅茶』が使用しています。

  • 図:発売当初からの売り上げ推移と2021年の目標値

    発売当初からの売り上げ推移と2021年の目標値

スリランカから高品質の紅茶葉を購入することにより、私たちは上質な紅茶飲料を生産でき、一方で私たちが大量の紅茶葉を購入することにより、スリランカの紅茶葉農園の収益が増加する。これは文字どおり、win-winの関係でした。『午後の紅茶』発売から20周年を迎えた2006年、私たちはさらに一歩踏み出し、スリランカ産紅茶葉の産地ブランド化に乗り出します。

小腹の空くおやつ時に、スマートに満足感を得たい。そうしたニーズに応えるべく開発したのが、2006年発売の『午後の紅茶スペシャル 茶葉2倍ミルクティー〈ウバ100%〉』です。商品名に冠された〈ウバ〉とは、スリランカ紅茶葉の生産地。この商品で初めて、商品名とパッケージに生産地が入りました。

ウバはスリランカの中央山脈の南東側に位置し、かねてから世界三大紅茶に名を連ねる銘産地です。しかしながら、当時、それを知るのは一部の紅茶ファンのみ。生産地の名前を出すことは、私たちにとっても初めての挑戦でした。この商品がヒットしたことで日本におけるウバの認知が高まり、産地のブランド価値の向上に貢献できたと考えています。

感謝の想いとともに始まった『キリン スリランカフレンドシッププロジェクト』

一時的な落ち込みを除き、その後も『午後の紅茶』は順調に売上を伸ばしていきました。そこで、お客様に愛される味わいを支えるスリランカの紅茶葉農園に対し、改めて感謝の意を示したい。そんな想いに共感し、アイデアをくださったのが本における紅茶研究の第一人者であった、故・磯淵猛先生です。

スリランカの現地と深くつながりのあった磯淵先生は、私たちに、あらゆることの機械化が進んだ現代においても、人がいなければ紅茶飲料は作れない、“ものづくりは人づくりから”であることを説いてくださいました。

“人づくり”から始めるためには、紅茶葉農園の未来を担う子どもたちが満足な教育を受けられる必要がある。こうした磯淵先生のアドバイスのもと2007年に始まったのが、今も続く『キリンライブラリー』です。

スリランカでは各地で紅茶葉の生産が行われていますが、世界三大紅茶に数えられるウバを含め、その多くが地方です。都市部とは異なり、日本では当然のように置かれている学級文庫や図書館がありません。そこで私たちは紅茶葉農園で働く人たちのお子さんが通う小学校に、良質な図書を寄贈する活動を開始しました。

子どもたちの学力向上や将来の夢を描くお手伝いをするべく、各校に本棚を1台、物語や図鑑に地図など、学校の希望を聞きながら現地の書籍を選定し、1校に約100冊の図書を寄贈しています。活動の第1期の2007~2011年には12校への支援を実施し、第2期の2012~2016年には109校にまで支援を拡大しました。第3期となる2017~2022年は、約100校を目標に活動を続けています。

私たちが『キリンライブラリー』を始めた2007年は、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が日本企業に根付きつつあったものの、CSVに関しては、その言葉が一般に知られる前のこと。私たちはこの活動を礎に、スリランカとの関係をより密にする『レインフォレスト・アライアンス認証取得支援』を開始し、本格的な『キリン スリランカフレンドシッププロジェクト』を始動させました。そして今ではキリンのCSVの象徴となる取り組みにまで進化しました。

持続可能な農園づくりを支援するトレーニングを開始

レインフォレスト・アライアンス認証の取得支援に乗り出した具体的なきっかけは、2010年に愛知県名古屋市で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」にあります。私たちが本気で策を練り、行動に移さなければ、生物の多様性は失われてしまう。そうした現実の最前線に、私たち食品企業が直面していることを学んだのです。

生物の多様性を失うことは、飲料の原料を失うことをも意味します。また、生物多様性の保全を軽視するような経済活動が、ブランド価値の毀損や不買運動につながった事例も世界には多数ありました。そこで私たちは、森林破壊のリスク及びレピュテーションリスクの観点から調査を実施。調査時点では紅茶葉のリスクは大きくないと評価されたものの、紅茶葉またはスリランカで大きな問題があった場合には、『午後の紅茶』の製造にリスクが発現する可能性が高いことが明らかになりました。

『午後の紅茶』の品質を保ち、ずっと製造し続けるためには、どうすればいいのか。その答えが原料生産の持続可能性を強化すること、つまりは紅茶葉の生産地であるスリランカの農園を支援することでした。どのように支援するべきなのか、さまざまな議論を重ねた先にたどり着いたのが、このレインフォレスト・アライアンス認証の取得支援でした。

当時のスリランカは内戦終結から間もなく、また貧富の差が激しいため、レインフォレスト・アライアンスを取得しているのは、ある程度の経済規模を持った大農園に限られていました。調達する紅茶葉を認証茶葉だけにすれば、『午後の紅茶』の原料は持続可能だとアピールできます。しかしそれは同時に、資金不足で持続可能な農業を目指せない農園を切り捨てることになり、生産地全体の持続可能性向上にはつながりません。また、調達先が限られることによるリスクも発生します。

そこで私たちは認証を取得した農園から紅茶葉を購入するのではなく、スリランカのより多くの農園が認証を取得できるように支援をすることを決意しました。

認証の取得を支援することによって、より持続可能な農園が増えるほど、スリランカ紅茶葉生産の持続可能性は高まり、私たちもその上質な茶葉を長く、安定的に調達できます。農園にとっても、認証取得によって私たちだけでなく、他企業とのビジネスにも発展していきます。『午後の紅茶』の成功でスリランカ産紅茶葉の輸入量が増加したように、また新たにwin-winの関係を築けるのではないか、と考えたのです。

紅茶葉農園の約30%が認証取得へ

こうして『レインフォレスト・アライアンス認証取得支援』がスタートしたのが2013年。認証取得を目指す紅茶葉農園により本気になっていただくため、認証取得のための審査費用は農園側が負担し、取得のために必要なトレーニング費用を私たちが支援する形にしました。

実際のトレーニングの内容は、豪雨による良質な土壌の流出や地滑りなどの災害を防ぎ安定収穫が可能な農園を造るための整備、農園とその周辺に棲む野生動物が共存するための保護活動、環境に配慮した廃棄物や排水の処理、さらには働く人たちの健康を維持するための農薬指導から農園の未来を担う子どもたちの教育支援まで、多岐にわたります。

  • トレーニングの様子

2018年からは大農園のみならず、小農園の認証取得支援も開始しました。小農園で摘んだ茶葉も大農園の工場に持ち込まれ、まとめて加工・出荷されるため、大小すべての農園が持続可能にならないことには、真の持続可能性は実現できないと感じていたからです。

  • 図:達成状況

  • 図:収益性

活動開始から8年目となる2020年末時点では、スリランカにおいて認証を受けた紅茶葉大農園は93農園となりました。この数字はスリランカで認証を取得している紅茶葉農園の約30%に当たり、取得農園の増加は収益増にも、農園で働く人の給料増にも寄与しています。現在は789の小農園が認証取得のためのトレーニングに励んでおり、2025年末に10,000の小農園で認証取得開始ができることを目標に、取り組みを進めている最中です。

また活動によって顕在化した、新たな課題にも向き合っています。スリランカの紅茶葉農園の一角に、マイクロ・ウォーターシェッドと呼ばれる泉が湧いている場所があります。これらは沿岸部の都市に流れる河川の源流となっているにもかかわらず、スリランカの紅茶葉農園が存在する標高の高い場所では、畑にされたり放牧に使われたりして荒れているところが多く見受けられている一方で、政府に予算がなく水源の保護が遅々として進んでいないということが農園マネージャーとの対話でわかりました。

そこで2018年からは紅茶農園内の水源地保全活動を始めており、マイクロ・ウォーターシェッドを柵で囲むだけではなく、地域の住民にも水源地を守ることの重要性を教育しています。今後も認証取得支援先の紅茶農園と周辺地域の持続性をより高める活動を行っていきます。

CSVを社会へ発信する『午後の紅茶』

スリランカの方々のご協力のもと、発売から35周年を迎えた今、『午後の紅茶』はキリングループのフラッグシップブランドに成長しました。今や日本では、世代を問わずお客様との接触点が最も多い商品に育っています。

キリングループのフラッグシップブランドを担う『午後の紅茶』は、私たちのCSV活動を体現する商品でもあります。私たちは2013年に、日本企業で初めてCSV本部を設立しCSV経営へと大きく舵を切りました。社会と価値を共創し、持続的に成長するための指針となるCSVパーパスとして、酒類メーカーとしての責任に加え、「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」の3つを掲げていますが、この3つすべてを体現しているのが、『午後の紅茶』なのです。

その中で「地域社会・コミュニティ」と「環境」を体現する活動が、今回ご紹介した、スリランカ支援の契機となった『キリンライブラリー』と、紅茶葉農園と私たちのwin-winの関係を築く『レインフォレスト・アライアンス認証取得支援』からなる『キリン スリランカフレンドシッププロジェクト』です。

『午後の紅茶』が真のCSVを体現するには、まだ道半ばです。お客様や流通パートナーにも参画いただいてこそ、CSVの輪が広がり、持続性がなお高まります。そのためにはまず、なるべく多くの皆様に『午後の紅茶』で体現する私たちの活動を知っていただきたいと思っています。

2021年8月3日にリニューアル発売となる『キリン 午後の紅茶 ストレートティー 250ml LLスリム』は、スリランカ産のレインフォレスト・アライアンス認証茶葉を90%以上使用した商品です。これは35年間にわたり、スリランカ産紅茶葉を使い続けてきた私たちにとっても初めての試みです。パッケージの正面にレインフォレスト・アライアンス認証マークを配置し、私たちのCSV活動を認識いただくとともに、認証制度そのものの認知向上も図っていきます。

また、今春の定番3商品のリニューアルでは、ストレート、ミルク、レモンの茶葉の生産地をディンブラ、キャンディ、ヌワラエリアとラベル表記しました。茶葉2倍ミルクティーによるウバのブランド化の成功をほかの地域にも拡大し、スリランカ紅茶葉生産地のブランド資産の構築に貢献していきます。

経済インパクトから、さらに先の社会的インパクトへ

『午後の紅茶』を通じた私たちのCSV活動が、社会にどのような価値を創り出すのか。キリンホールディングス常務執行役員を務める溝内良輔は、こう話します。

「私たちが行ってきた活動により、スリランカとは持続可能なwin-winの関係を築けてきたのではないか、と自負しています。『午後の紅茶』を通じてスリランカ産紅茶葉のブランド価値が向上し、スリランカの農園の方が豊かになって、スリランカ経済が発展します。また、そのようなブランド価値の高い紅茶葉を選別して使用している『午後の紅茶』のブランド資産も強化され、販売も拡大します。

すると何が起こるのか。原料生産地の持続可能性を強化しているキリングループが、社会的なインパクトを与えながら成長している、それなら私たちもと、多くの企業が取り組みを始めてくれるのではないでしょうか。これは自然環境の保護についても同様です。

私たち一社ができることは、けっして大きくはありません。それでも私たちの活動が経済界に一石を投じることで、ポジティブなインパクトを自然と社会へ広げていくことができます。私たちはキリングループのフラッグシップブランドである『午後の紅茶』を通じ、持続可能な未来に貢献していきたいと思っています」。

プロフィール

溝内良輔

1982年キリンビール入社。市場リサーチ室長などを経て、2012年にキリンホールディングス株式会社経営企画部長。2015年常務執行役員ブラジルキリン担当。2017年からグループのCSV戦略を担当。

※所属(内容)は掲載当時のものになります。

価値創造モデル

私たちキリングループは、新しい価値の創造を通じて社会課題を解決し、
「よろこびがつなぐ世界」を目指しています。

価値創造モデルは、キリングループの社会と価値を共創し持続的に成長するための仕組みであり、
持続的に循環することで事業成長と社会への価値提供が増幅していく構造を示しています。
この循環をより発展させ続けることで、お客様の幸せに貢献したいと考えています。