協和発酵バイオ

協和発酵バイオは1949年協和発酵工業として設立し、2008年キリングループに合流しました。機能性アミノ酸や核酸に代表される医薬品原料やヘルスケア素材を製造し、お客様へ提供しています。その用途は幅広く、健康食品・医薬品原薬・中間体・細胞培養培地・化粧品など多岐にわたります。市場ニーズに沿った機能性素材を開発し、各分野へ供給することにより、世界の人々の健康と豊かさに貢献することを目指しています。

2023年6月5日

  • スペシャリティ素材の 販売強化に取り組む

  • スペシャリティ素材の 販売強化に取り組む

中長期戦略としては、スペシャリティ素材の販売強化に取り組むことで、収益改善の実現を目指しています。アミノ酸事業の大幅縮小を実行するとともに、あらゆる選択肢を念頭に抜本的な構造改革を前倒しで実現していきます。また、スペシャリティ素材であるシチコリン※1とヒトミルクオリゴ糖※2に資源を集中します。

  1. 脳や神経細胞にある細胞膜を維持する働きをもつ、体内に存在する成分。世界各国で脳疾患の治療薬や認知機能向上をサポートする健康食品などに利用されている素材
  2. 母乳に含まれるオリゴ糖の総称。200種類以上が母乳中に含まれており、「免疫」「脳機能」などに寄与する研究成果が報告されている
2022年振り返り
  • 2022年は、新型コロナウイルス感染拡⼤や原材料などの高騰などにより、収益⾯‧販売⾯で厳しい影響を受けました。こうした背景の中で、元々縮小する予定であった低収益のアミノ酸事業の構造改革を急ぐ必要があり、資産を大幅に減損するという経営判断をしました。
  • 一方で、今後の事業の成長を担うスペシャリティ素材である、シチコリンとヒトミルクオリゴ糖については順調に取り組みを進めています。シチコリンは製造工場を増設するとともに、市場の大きい北米エリアでの販売体制を強化しました。ヒトミルクオリゴ糖についてはタイに製造工場を新設し、上市に向けた準備を着実に進めています。
2023年取り組み
  • シチコリンとヒトミルクオリゴ糖の販売を強化し、コモディティ化しているアミノ酸事業の縮⼩を計画から前倒しして実⾏していきます。
  • シチコリンは2023年には150億円の市場規模に達すると見込まれています。⼭⼝事業所(防府市)に設備を増設し、2023年内に健康⾷品⽤の商業製造に向けて試運転を開始します。また、スペシャリティ素材に特化するために営業体制の再編を行った⽶国に注⼒し、シチコリンの製品ブランドであるCognizin(コグニチン)のブランディングを強化、販売戦略をさらに強化していきます。
  • ヒトミルクオリゴ糖入り粉ミルク市場の2022年~2027年における年平均成⻑率は20%〜30%程度※3と⾒込まれています。機能性に関する研究を強化しつつ、世界各国における上市に向けた規制対応を進め、営業活動を推進していきます。今期中に東南アジアでの販売開始を⽬指します。THAI KYOWAから安定的に、安全で⾼品質なヒトミルクオリゴ糖を供給することで、世界中の乳幼児の健全な発育と成⻑に寄与します。
  • 2023年4月に設立された「ヘルスサイエンス研究所」との連携を深めて、上記2品のスペシャリティ素材だけでなく、次世代を担う開発パイプラインの拡充を推進します。
  1. Barclays, “HMOs the next frontier of Infant Formula innovation”, March 2022
    ヒトミルクオリゴ糖入り粉ミルク市場の年平均成⻑率は、2022年〜2027年にかけての予測値

ヒトミルクオリゴ糖の⽣産設備が完成

  • 写真:THAI KYOWA ヒトミルクオリゴ糖生産設備 外観

    THAI KYOWA ヒトミルクオリゴ糖生産設備 外観

  • THAI KYOWA 社長 ⻑野 宏 協和発酵バイオ 営業マーケティング部 落合 将之

  • THAI KYOWA 社長 ⻑野 宏 協和発酵バイオ 営業マーケティング部 落合 将之

協和発酵バイオは、2000年に世界で初めて※4⼯業レベルで⼤量⽣産が可能なヒトミルクオリゴ糖⽣産技術を確立しました。

ヒトミルクオリゴ糖は⺟乳に含まれるオリゴ糖※5の総称です。⺟乳に含まれる固形成分の中で、ラクトース、脂質に次ぐ、三番⽬に多い成分で、これまでに200種類以上のヒトミルクオリゴ糖が⺟乳から発⾒されています。⽜乳や他哺乳類由来の乳にはほとんど含まれず、特にヒトの初乳に多く含まれることから、乳幼児にとって重要な成分であることが知られています。ヒトミルクオリゴ糖入り粉ミルク市場は欧⽶で継続的に伸⻑しているだけでなく、⼈⼝増加が⾒込まれる中国‧東南アジア地域でも消費拡⼤が期待されており、今後の年平均成⻑率は20%〜30%程度と予測されています。

今回、消費拡⼤が⾒込まれるアジアへの展開と、優秀な人財やヒトミルクオリゴ糖の⽣産に必要な原材料が確保できる利点を踏まえ、キリングループのエンジニアリング部⾨の知⾒と技術を集約させてTHAI KYOWAにHMO⽣産設備を建設しました。ヒトミルクオリゴ糖の製造は2022年から開始し、2023年から粉ミルクメーカーなどへの販売を始めるとともに、当社グループ内での商品開発も行い、ヒトミルクオリゴ糖のニーズが高い世界各国への展開を⽬指します。

  1. Tetsuo Endo et. al.,Appl. Microbiol. Biotechnol. 53, 257-261(2000)
  2. 数個の単糖が結合した糖類。ヒトミルクオリゴ糖は主にグルコース、ガラクトース、フコース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルノイラミン酸によって構成される