財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
経営成績の状況
① 事業全体の状況
2025年、世界は引き続きめまぐるしく変化し、当社グループを取り巻く経営環境にも大きな影響を及ぼしました。世界各地の消費マインド低迷に加え、健康意識の高まりによりアルコールや砂糖等の消費に対する規制や抑制の動きが強まり、事業環境は一段と厳しさを増しました。AIの進歩により人々の価値観や生活様式は急速に変化し、気候変動や各地での紛争、米国をはじめとする政権交代による経済の不安定化等、変化を的確に捉えた経営が必要とされてきています。
こうした状況下で、当社グループは、一貫してCSVを経営の根幹に据えることにより長期的かつ持続的な成長を目指すとともに、環境変化に迅速かつ柔軟に対応するため、2025年度より、3年計画を毎年見直す新たな経営サイクルに移行しました。
また、酒類・飲料・医薬の各事業に加え、健康課題の解決を事業機会とするヘルスサイエンス事業をグループの成長ドライバーとすることを目指してきました。2025年は、㈱ファンケルの100%化完了と、協和発酵バイオ㈱のアミノ酸事業等の売却を行ったことで収益性が改善し、ヘルスサイエンスの成長への事業基盤が整いました。既存の酒類・飲料・医薬事業も堅調に推移し、計画を上回る成果を創出した結果、連結事業利益は3年連続で過去最高を更新しました。
ESGの取り組みにおいても、外部機関から高い評価を獲得しました。ESG指標のMSCI ESGレーティング※では、世界的なCSV経営先進企業と並ぶ「AA」評価を5年連続で獲得しました。
また、当社は、第7回「日経SDGs経営調査」における「SDGs経営」総合ランキングでは、7年連続最高位を獲得し、その中でも1社のみに与えられる最上位の「大賞」を受賞しました。
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※米国モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)社が、環境、社会、ガバナンスのリスクに対する回復力を測定し、AAA-CCCで評価する格付けです。
LION PTY LTDは、社会・環境パフォーマンス、説明責任、透明性等において高い基準を満たした企業の一員として「B Corp」認証を受けました。北米のNew Belgium Brewing Company, Inc.及び豪州のBlackmores Limitedも認証されており、グループの海外主要事業会社の取り組みも高く評価されています。
| 2025年実績 | 2024年実績 | 対前年増減 | 対前年増減率 | |
|---|---|---|---|---|
| 連結売上収益 | 2兆4,334億円 | 2兆3,384億円 | 950億円 | 4.1% |
| 連結事業利益 | 2,518億円 | 2,110億円 | 408億円 | 19.3% |
| 連結営業利益 | 2,097億円 | 1,253億円 | 843億円 | 67.3% |
| 連結税引前利益 | 2,379億円 | 1,397億円 | 981億円 | 70.2% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 1,475億円 | 582億円 | 893億円 | 153.4% |
(重要成果指標)
| 2025年実績 | 2024年実績 | 対前年増減 | 対前年増減率 | |
|---|---|---|---|---|
| ROIC | 7.6% | 4.1% | ― | ― |
| EPS | 182円 | 72円 | 110円 | 153.4% |
2025年度の連結売上収益は、各事業の順調な進捗及び㈱ファンケルの通年寄与等により増加し、過去最高となりました。連結事業利益は、日豪の酒類事業をはじめとした各事業の順調な進捗及び㈱ファンケルの通年寄与、協和発酵バイオ㈱構造改革の早期実現等ヘルスサイエンス事業の収益性向上により大幅な増益となり、過去最高益を更新しました。なお、親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業利益の増加等により、前期比2.5倍以上の大幅な増益となりました。
重要成果指標について、ROICは、当期利益の増益により年初目標を達成し7.6%となりました。EPSは、親会社の所有者に帰属する当期利益の増加に伴い大幅に増加し、前年より110円増加の182円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
セグメント別の業績は次のとおりです。
| 2025年実績 | 2024年実績 | 対前年増減 | 対前年増減率 | |
|---|---|---|---|---|
| 連結売上収益 | 2兆4,334億円 | 2兆3,384億円 | 950億円 | 4.1% |
| 酒類 | 1兆753億円 | 1兆817億円 | △64億円 | △0.6% |
| 飲料 | 5,782億円 | 5,649億円 | 133億円 | 2.4% |
| 医薬 | 4,965億円 | 4,953億円 | 12億円 | 0.2% |
| ヘルスサイエンス | 2,514億円 | 1,753億円 | 761億円 | 43.4% |
| その他 | 320億円 | 213億円 | 108億円 | 50.6% |
| 連結事業利益 | 2,518億円 | 2,110億円 | 408億円 | 19.3% |
| 酒類 | 1,354億円 | 1,240億円 | 113億円 | 9.1% |
| 飲料 | 677億円 | 640億円 | 37億円 | 5.8% |
| 医薬 | 1,023億円 | 919億円 | 105億円 | 11.4% |
| ヘルスサイエンス | 111億円 | △109億円 | 220億円 | ― |
| その他 | △647億円 | △580億円 | △67億円 | ― |
財政状態
① 事業全体の状況
2025年度末の資産合計は、前年度末に比べ1,399億円増加して3兆4,940億円となりました。有形固定資産、のれん及び無形資産については、協和キリン㈱における開発品導入等に伴う無形資産及び工場建設の進行に伴う有形固定資産の増加等により、前年度末に比べ1,319億円の増加となりました。
資本は、利益剰余金が702億円増加、その他の資本の構成要素が444億円増加、非支配持分が440億円減少し、前年度末に比べ614億円増加して1兆5,951億円となりました。その他の資本の構成要素の増加要因は、主に円安の影響によって在外営業活動体の換算差額が415億円増加した影響です。また、非支配持分の減少要因は、㈱ファンケルの追加取得の影響です。
負債は、前年度末に比べ785億円増加して1兆8,989億円となりました。社債の新規発行等により社債及び借入金が659億円増加しました。
これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は36.8%、グロスDEレシオは0.72倍となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
酒類事業
2025年度末のセグメント資産は、設備投資による有形固定資産が増加したこと等により、前年度末に比べ660億円増加して1兆4,335億円となりました。
飲料事業
2025年度末のセグメント資産は、設備投資による有形固定資産が増加したこと等により、前年度末に比べ384億円増加して3,647億円となりました。
医薬事業
2025年度末のセグメント資産は、販売権及び営業債権が増加したこと等により、前年度末に比べ439億円増加して1兆566億円となりました。
ヘルスサイエンス事業
2025年度末のセグメント資産は、棚卸資産が減少した一方で短期貸付金が増加したこと等により、前年度末並みの7,641億円となりました。
キャッシュ・フロー
① キャッシュ・フロー及び流動性の状況
2025年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前年度末に比べ174億円増加(会計方針の変更による減少107億円を除く)の1,253億円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動による資金の収入は前年同期に比べ526億円増加の2,954億円となりました。非資金損益項目である、前年度に計上した段階取得に係る差損の反動減183億円及び持分法による投資の減損損失の反動減193億円があり、運転資金の流出も123億円増加したものの、税引前利益が前年同期に比べ981億円増加の2,379億円となったこと等により、小計では384億円の増加となりました。小計以下でも法人所得税の支払額が178億円減少したこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期比で増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動による資金の支出は前年同期に比べ1,444億円減少の1,850億円となりました。減少の主な要因は子会社株式の取得による支出であり、前年度に行ったOrchard Therapeutics Limitedや㈱ファンケルの連結子会社化の反動減のため、前年同期に比べ1,449億円減少の149億円となりました。また、当年度の資金の収入には、有形固定資産及び無形資産の売却による収入が81億円、政策保有株式の縮減に向けた取組みを引き続き推進したことによる投資の売却による収入が6億円ありました。なお、有形固定資産及び無形資産の取得について、前年同期に比べ50億円減少の1,756億円を支出した他、持分法で会計処理されている投資の売却による収入は前年同期に比べ29億円減少の6億円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動による資金の収支は1,105億円の支出(前年同期は581億円の収入)となりました。社債の発行による収入が1,000億円、長期借入による収入が前年同期に比べ2,689億円減少の280億円となり、社債の償還による支出が前年同期に比べ50億円増加の350億円、長期借入金の返済による支出が前年同期に比べ484億円減少の300億円となりました。なお、当年度において連結子会社である㈱ファンケルの株式を追加取得したことにより、非支配持分からの子会社持分取得による支出が818億円となりました。また、当社では当年度よりDOE(連結株主資本配当率)5%以上を目安とする配当を実施しており、非支配持分を含めた配当金の支払額は735億円となりました。
当社グループは資本コストを意識し、より安定的かつ持続的な配当を実現するため、DOE5%以上を目安とし、原則として累進配当を実施する配当方針を継続します。安定配当を最優先に、有利子負債返済と将来成長のための無形資産投資を実施しながら、キャッシュバランスに応じて投資や株主還元を検討していきます。
② 資本政策の基本的な方針
当社は事業への資源配分及び株主還元について以下の通り考えております。
事業への資源配分については、ヘルスサイエンス領域を中心とした成長投資を最優先としながら、既存事業の強化・収益性改善に資する投資を行います。また、将来のキャッシュ・フロー成長を支える無形資産(ブランド・研究開発・ICT・人的資本など)及び新規事業創造への資源配分を安定的かつ継続的に実施します。なお、投資に際しては、グループ全体の資本効率を維持・向上させる観点からの規律を働かせます。
株主還元についても経営における最重要課題の一つと考えており、1949年の上場以来、毎期欠かさず配当を継続しております。2024年度まで「平準化EPSに対する連結配当性向40%以上」による配当を実施し、2025年度以降は、より安定的かつ持続的な配当を実現するため、DOE(連結株主資本配当率)5%以上を目安とし、原則として累進配当を実施する配当方針へ変更いたします。企業価値向上を目指す資本コストを意識した経営の一環として、株主の皆さまへの利益還元の一層の充実と資本効率の向上を図ることといたします。自己株式の取得については引き続き、追加的株主還元として最適資本構成や市場環境及び投資後の資金余力等を総合的に鑑み、実施の是非を検討していきます。
資金調達については、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢に左右されない高格付けを維持しつつ、負債による資金調達を優先します。中長期的な目標達成に必要とされる投資に係る資金調達により支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資金調達については、ステークホルダーへの影響等を十分に考慮し、取締役会にて検証及び検討を行った上で、株主に対する説明責任を果たします。