COOメッセージ
人と技術の力でイノベーションを起こし続けるグループを目指す
目指す姿に向けて実行あるのみ
キリングループは、ものづくりを通じてお客様、患者さんによろこんでいただき、その笑顔を見て自分もうれしくなる、そういう社員たちの集団です。これは、グループ経営理念そのものですが、私自身、入社後配属されたビール工場で、おいしいビールをお届けしたいと仲間と一緒にいろいろなトライアルをしていた時から実感しています。
一方、事業ポートフォリオの変革とともに、国内外グループ従業員を取り巻く環境も大きく変化しました。特に、現会長磯崎CEOの下で2019年から推進した「KV2027」により、ヘルスサイエンス事業が昨年黒字化を果たし一つの柱として育ってきました。劇的に変化する外部環境に対応し、自ら環境を変えることにより、酒類、飲料、医薬の既存事業においてもそれぞれ「稼ぐ力」を高めてきました。
ここからさらに成長していくために、COOとして私は、新たな価値を生み出すための実行力を継続して高めていきます。最初にビール工場の話をしましたが、同じキリンビールという会社の中でも工場により生産性などに差が生じるもので、その要因は3つが揃うかどうかでした。「設備」、「仕組み」、「人」です。そして、「設備」「仕組み」を運用する「人」が、実行力には特に重要です。
これをグループ全体に当てはめても同じことが言えると思います。「KV2027」の変革により、事業ポートフォリオの確立、経営の仕組みの整備などは進みました。これらを生かし、世の中に先んじて商品・サービスを生み出し続け、さらなる成長につなげていくためには、国内外従業員一人ひとりの力を最大化することが最も重要です。そのような認識のもと、CSVを不変の羅針盤としながら、「次の10年、私たちは何に取り組むのか」をまとめたものが、新たな長期経営構想「Innovate2035!」です。
2025年度からは向こう3年の目標を毎年ローリングしていく戦略策定方式にしましたが、とにかく10年先までに登る「山」さえ決まっていれば、登っていくための道は変えていってもよいということです。頂上に近づくことが重要であり、実行あるのみです。
戦略の実現においては、従業員がフォワード
私は、社長就任以来継続して、国内外の拠点、まさに現場を訪問して従業員との直接対話を重ねています。その対話の中から、実行力を上げていく上での課題も浮かび上がってきました。そこで、「Innovate2035!」の実現に向けて、グループが共通して大切にしている価値観「3 Values」と、従業員一人ひとりが実践していく行動指針「6 Principles」からなる「KIRIN WAY」をつくりました。特に「6 Principles」は、一人ひとりが自分事化し実践していくこと、それがチーム、事業全体、グループ全体へと拡大していくことで、より実行力と変革力のある組織に変わっていくと思っています。
サッカーに例えると、どんなに立派な戦略があっても、実行し、前線に出てゴールを決めるのは従業員です。現場の実行力という意味では、従業員がフォワードで、経営はバックからフォワードに良いパスを出すサポート役なんだと思います。経営が上ではなくて現場が上、ゴールを決めるのは現場の自分なんだと思って仕事ができるようになると、もっともっと仕事もおもしろくなってくるんじゃないでしょうか。
そのため、国内外グループ従業員が「KIRIN WAY」を自分事化する状態を作り出すことは、今年度の最優先課題です。まずトップが動いて発信することが大事で、私を先頭に、役員、事業会社の社長が動き出しています。「6 Principles」の一つに「Go to “Gemba”」がありますが、私はもちろんのこと、各事業会社社長も現場へ赴き従業員との直接対話を継続して行うことで、現場の今の実行力が本当に高まっているかどうかを、実感を持って確認しています。
そこで見いだした課題は現場により異なりますが、リスク回避的風土や多層的な承認プロセスなどにより「攻め」の行動が不十分であるケースや、内部調整に時間を取られ外に出て行く時間がつくれなかったりといった場面が見られたことから、早速経営として仕事の仕組みや評価制度の見直しに着手しました。
企業のカルチャーを変えられるのはトップであり、近道はありません。「KIRIN WAY」の自分事化が今年度の最優先課題と言いましたが、1年でやめるつもりはありません。愚直に続けていくことが大事であり、一見遠回りに見えるかもしれませんが、効果が現れてくるとものすごく大きなパワーとなります。
2024年に社長に就任してからも、現場の実行力の変化を自分の目で確認してきており、非常に良い兆候も感じています。それが結果に現れているのが昨年度の業績です。売上収益・事業利益ともに過去最高となり、全ての事業領域で目標を達成しましたが、年度末に向けて失速するのではなく、むしろだんだん良くなってきていて、モメンタムが高まりました。従業員の「やりきって目標を達成する」というモチベーションが上がってきています。
新長経でお示ししたEPS成長とROICの目標も、現場と経営が一体となって必ず達成します。
ゼロから1を生み出し1を10、10を100にしてイノベーションを起こし続ける
2035年ビジョンは「人と技術の力でイノベーションを起こし続けるCSV先進企業として世界をもっと元気にしている」としました。イノベーションを「生活者の行動変容を促し、社会に新たな生活習慣を生み出すこと」と定義しました。
ものづくりの企業として、新しいものを生み出す力、それを社会にアウトプットする力を強化していかなければなりません。ゼロから1を生み出すR&Dは、成長の源泉です。当社グループの事業に共通する基盤である発酵・バイオ技術の力をもっともっと引き上げていくべく、R&Dを特に強化する組織能力として位置付けています。新しい素材や、技術の新しい組み合わせなど、将来の事業の種をどんどん増やしていくことが大事です。
キリングループは酒類、飲料・ヘルスサイエンス、医薬という独自の事業ポートフォリオを持ち、それぞれの事業領域や研究分野に、サイエンスをベースとしながら、独自の発想、多様なアプローチ、深い洞察力を備えた研究者がいます。競争優位を生む高い専門性を有する人財として、2025年の時点で、当社グループ全体で228名が博士号を保有しています。異なるキャリア、知見、専門性を持った人たちが事業の垣根を飛び越え混じり合えば、さまざまな化学反応が起こるでしょう。ここに、キリングループだからこそ起こすことができるイノベーションの大きな可能性があります。既に、事業の枠を超えた研究者の交流・異動を進めている他、キリンホールディングスと協和キリンの合弁により「健康」に関するイノベーションの探求と事業化を目指す「Cowellnex(コヴェルネクス)社」も2024年に立ち上げています。
こうしてゼロから1を生み出した後、1を10にし、10を100にして社会にアウトプットしていかなければイノベーションとはなりません。プラズマ乳酸菌はゼロから1を生み出した事例ですが、これをお客様に届けたいという熱い想いを持った人財がマーケティングをはじめとするあらゆるバリューチェーンから集まって、事業化に成功しました。ビジョンにある「人と技術の力」という文言は、「人と技術は両輪である」という考えを表したものです。
キリングループは、過去において、自身がイノベーションにより創造した市場でありながら後続の競合に追い抜かれた苦い経験もあります。だからこそ、イノベーションで生み出した商品を、さらに良いものにする、もっとおいしいものにする、もっと効果・効能あるものにしていくよう、「イノベーションを起こし続ける」のです。その積み重ねが、生活者の生活に新たな商品やサービスが入り込み、習慣化され、笑顔を生み出すことにつながります。これこそが「お客様・患者さん本位」であると考えています。
キリングループを「おもしろい会社」にしていきたい
今、私たちを取り巻く世界経済、事業環境は不確実性を増し、時代の先を読むことがとても難しくなっています。しかし、先を読む努力を続けるとともに、環境や生活者の行動を当社側からも変えなければいけません。昨日までの成功体験が明日からも生きるとは限らず、常に生活者の将来のニーズを読み解きながら、日々起こるいろいろな環境変化を捉え、アジャイルに具体的なモノやサービスとしての提案につなげていかなければなりません。Z世代、α世代と言われるように、新しい世代が登場し価値観もどんどん変化していく中で、いかに早く自分たちが変化できるか、いかに時代にふさわしい仕事が担える組織に変わっていけるか、そこが問われているのです。現状維持は後退となる時代です。リスクを取って攻めていく姿勢を持ち続けることが大事だと考えます。
変化していく中でも、決して行き先を見失うようなことがあってはなりません。キリングループにはCSV経営という確かな軸があります。私たちの使命は、事業を通じて社会価値・経済価値を生み出すことです。社会価値・経済価値の提供という意味での勝ちにこだわっていくことが私たちにとっての攻めであり、従業員一人ひとりが「自分がやってみたい」と思うことを存分にできる環境をつくることで、イノベーション創出力を最大化していきます。
私が思い描くのは、多種多様なおもしろい商品・サービスを次々と世に先んじて出していくキリングループの姿です。生活者の皆さんに「これ使ってみたい」「これ試してみたい」と思っていただけるような、心と身体の健康に関する提案を次々と打ち出して、キリングループ独自の魅力が世の中に広く伝わっていくようにしたいと思っています。「キリンは次に何を出すのだろう」と期待してもらえる会社、「自分もキリンでおもしろいものをつくってみたい」という人が集まってくる会社にし、生活者の心と身体の健康に貢献し、笑顔にあふれた社会をつくりたいのです。