CEOメッセージ

CEOメッセージ

「世界のCSV先進企業」として、生活者の心と身体の健康の未来を創造する

有言実行により、成長実現へ新たなステージへシフト

2019年にスタートした9カ年の長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」の最終年度が近づく中、さらに先を見据えた長期ビジョンを執行で議論してきました。それが「Innovate2035!」です。

過去、当社グループは、長期ビジョンや中期経営計画を策定するものの、実現・達成に至らないまま、次の構想に移ることがありました。

しかし、今回は違います。私が社長として取りまとめた「KV2027」では「世界のCSV先進企業となる」ことを目指す姿に掲げ、社会課題解決を事業機会と捉え持続的成長につなげる経営を推し進めました。環境変化を見据え、酒類だけで大きな成長を続けることは難しいと判断し、「健康」課題の解決に事業で貢献するグループへと変革してきました。医薬事業が成長をけん引しながらも、食(酒類・飲料)と医で培ってきたR&Dを生かしたヘルスサイエンス事業を立ち上げ、その事業基盤確立を成し遂げました。

外部評価においても、日経SDGs経営大賞で2019年から7年連続最高位ランクイン、MSCI ESGレーティングで「AA」を5年連続で獲得し、特に環境領域においては、グローバルのトップ集団を走っていると自負しています。

また、2025年度はついにヘルスサイエンス事業が黒字化し、連結事業利益も3年連続で過去最高を更新しました。ここまで来る間、新型コロナウイルスの蔓延、地政学リスクの高まり、原材料価格の高騰など想定を超える環境変化もありましたが、従業員が持ちこたえ、有言実行するグループになった手応えがあります。CSVが従業員にも浸透し、「世界のCSV先進企業」に確実に近づいたため、次のステージに踏み出してもよいだろうと、「Innovate2035!」を策定したのです。

2015年に社長に就任した時から見えていた「山」に向かって、英国の経済学者であるケインズの言うアニマルスピリッツを持って突き進み、ほぼ近づくことができました。「Innovate2035!」でも、アニマルスピリッツを持つ従業員をもっと増やしていきたいと考えています。

新長期経営構想「Innovate2035!」

新たな長期経営構想を策定しましたが、CSVを経営の羅針盤とすることに変わりありません。むしろ、AIの急速な進化が象徴するように外部環境の変化は加速しており、CSV経営を一層推し進めていく必要があります。2025年度から、3年固定の中期計画をやめ、向こう3年の目標を毎年ローリングしていく方式にしたのも、外部環境の変化に機動的に対応するためです。

そして、グループとして取り組む社会課題を今まで以上に「健康」へと振り切り、飲料事業をヘルスサイエンスに統合していくことにより、酒類、飲料・ヘルスサイエンス、医薬から成る事業ポートフォリオで持続的に成長していきます。

2035年には、これら3領域がバランスよく同水準の利益構成となることを目指します。EPS年平均成長率1桁台後半%、ROIC10%以上という定量目標を既にお示ししていますが、CEOとしてEPSは2桁%成長を目指すとあえて申し上げたいと思います。

事業ポートフォリオ

「健康」課題を事業機会とし、目標とする利益成長を実現するための事業ポートフォリオは確立できており、既にノンコア事業はない体制となっています。各事業領域の方向性も定まりました。

しかし、事業ポートフォリオに「未来永劫このまま変わらない」という完成形はありません。

ヘルスサイエンス事業が黒字化したとは言っても、まだまだ伸ばさなければなりません。そのためには今後も投資を継続し、2035年には、売上収益5,000億円、事業利益率15%の「APAC最大級のヘルスサイエンスカンパニー」を実現します。

当然のことながら、リソースは有限です。私はかつて経営企画部長を務めていた時、当社がベストオーナーではない事業を15社売却しました。長期ビジョン実現、企業価値最大化の観点から、同様の検討は不断に行っており、この2月に決定したフォアローゼズの売却もその位置付けです。

過去の話になりますが、2016年から低収益事業の再編を断行しました。低収益事業の売却とフォアローゼズの売却は意味合いが異なりますが、いずれにしても、見ている「山」に向かうために決断するという点は同じです。ここ数年の買収・売却も、事業ポートフォリオ全体をどうすればビジョンを実現し企業価値を向上できるかという観点から方向性を定め、個別に当社側からアプローチして実行してきました。そうでなければM&Aの成功はおぼつきません。今後も、常に目的をぶらすことなく、取締役会において事業ポートフォリオを議論していきます。

R&D、マーケティング、デジタルの組織能力を強化し、人財も厚くしなければならない

グループ組織全体を見渡した時、新たな長期ビジョンを実現するために重要なテーマとなるのが、組織能力の強化です。

キリングループはメーカーとして圧倒的に差別化された競争優位な商品・サービスを作っていかなければなりませんが、その源泉はR&Dの力です。また、いくら優れた技術を開発したとしても、お客様に受け入れていただかなければ意味がありません。ここで重要になるのが、R&Dと生活者をつなぐマーケティングの力です。しかも、これからの時代、R&Dはもとよりマーケティングにも、AIがどんどん入ってくるでしょう。ですから、これらの分野には特に集中して投資を行い、人財も厚くしていく必要があると考えています。

人財への投資は強化していきます。当然、AIへの投資も決して後れをとることがないよう積極的に行っています。しかし、従業員には、常に「自分にしかできないことをやろう」と言っています。従業員には、AIにはない、アニマルスピリッツを持って取り組んでいってほしいと思うのです。人財を厚くするというのは、そうしたアニマルスピリッツを持って未知の状況に挑む人財が増えることであり、それが組織能力の強化につながっていくのです。

当社のCSVに共感し、グループに入ってくれる人財も増えています。そうした次世代を担う従業員が、自分が受け持っている仕事で何ができるか考えに考えて生まれてきたのが、例えばキリンビールの「晴れ風ACTION」や氷結®mottainaiブランド展開などのイノベーションです。

早期に時価総額3兆円を目指す

2025年度は、連結事業利益が過去最高を記録し、EPS、ROICも目標どおりとなりました。業績の向上とともに私たちが進めようとしている成長戦略、各事業の収益力の向上についても、投資家の皆さまにご理解いただき始めたのではないかと感じています。しかし、今の株価が満足できる水準であるとは決して思いません。やはり、グローバルな投資家に認めてもらえる水準、株式時価総額3兆円に早期に持っていきたいと思っています。そのためにも、マルチプルを引き上げていく必要があると考えています。

2024年から、私が代表取締役会長CEO、南方が代表取締役社長COOとし、執行部門を南方COOに任せることによって、私自身は社外とのネットワーキングにも時間を使えるようになりました。キリングループのためならどこへでも行こうと、社外講演を引き受け、あるいは、国連グローバル・コンパクトの国内組織の代表理事、経団連の農業活性化委員会委員長、取締役協会の副会長などの役職を務め、社外の情報や知見を経営に還元できるようにも努めています。

投資家の皆さまとの対話に力を入れていることは言うまでもありません。キリングループは「Innovate2035!」で次の成長ステージに進みます。生活者の心と身体の健康の未来を創造する企業グループとして、投資家の皆様のご期待に十分にお応えできるような形になりつつあります。そして、確かな成長戦略も描いています。それを実行、実現する姿をご覧いただき、信頼いただければ、私たちはしっかりとリターンで応えていくことをお約束します。

今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。