日本人とお酒

日本のお酒の歴史

日本人とお酒の付き合いは古く、縄文時代には酒造が行われていたという説もあります。

奈良時代には米と麹を用いた醸造法が確立されたものの、その後の平安時代までは、主に特権階級が飲むものだったようです。お酒が庶民でも入手できるようになったのは、造り酒屋が隆盛しはじめた鎌倉時代以降のことです。

江戸時代まで時代が下ると、現代とほとんど変わらない醸造法で作られたお酒が大量に流通し、庶民も日常的に楽しむようになりました。

そして明治維新後、西洋の食文化とともに、ビールやワイン、ウイスキーといった海外のお酒が広まっていきます。現在のような多様なお酒を楽しむスタイルのはじまりです。

すばらしい日本の飲酒文化

古来、日本では神々にお供えしたお酒をみんなで飲むことで、神様とのつながりを深めようと考えるなど、お酒を神聖なものとして扱ってきました。現代でも、お酒は神棚へのお供えや、お清め、儀式や行事に用いられ、神様と人々をつなぐ役目を果たしています。

このように、日本人はお酒に飲むこと以上の価値を見いだし、お酒との付き合い方を洗練させてきました。

たとえば、江戸時代の随筆などを集めた「百家説林」には、日本人の飲酒の考え方を知ることができます。さらに、足利時代に生まれたとされる「酒道」は「酔っ払うのを目的とするな、酒をもっと優雅で素晴らしいものにしよう」を基本精神に、お酒を通じて礼節を身に付け、精神性を高めようとしました。

桜や月、紅葉など、四季の花鳥風月を愛でながらお酒を楽しむのも、日本人らしい雅な風習です。私たちには、先人たちが研ぎ澄ませてきた、お酒にまつわる美意識が受け継がれているはずです。せめて、お花見で他人に迷惑をかけるような飲み方は慎みたいものです。

飲酒の十徳

「百家説林」より
一、礼を正し
二、労をいとい
三、憂を忘れ
四、鬱をひらき
五、気をめぐらし
六、病を避け
七、毒を消し
八、人と親しみ
九、縁を結び
十、人寿を延ぶ

  • 「労をいとい」は、疲労回復の効。
    「鬱をひらき」は、精神安定、ストレス解消の効。

小泉武夫「酒の功罪」、(社)アルコール健康医学
協会「お酒と健康 Vol.15」より

出典