国連大学キリンフェローシップ卒業生

エク ソフィップさん(Ek Sopheap)カンボジア出身

出身国での所属 カンボジア王立農業大学研究所 副学部長
国家標準協議委員会 研究員・技術委員(TC4)
研究テーマ カンボジアの発酵食品における枯草菌の分離・特性・生物的防除活動
研究室 食品衛生ユニット
アドバイザー Dr. 稲津 康弘 ユニット長

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食は地球上のあらゆる生物における基本的ニーズの中で、もっとも重要なものです。先進諸国を中心としたあらゆる社会において、健康維持に欠かせない存在として目を向けられています。 私の主な研究目標は、カンボジアの伝統的な発酵大豆である「シエン」から分離されたバクテリオシンを使って、食品に含まれるグラム陽性細菌や腐敗細菌を制御することです。この研究の成果は、枯草菌株から産生されるバクテリオシンを解明することに役立ち、カンボジアの食品産業には重要な食品保存料になりうると考えています。さらに、この研究は、カンボジアの発酵大豆食品を使うことで、食品の不要な細菌繁殖を抑えるために役立つ、大変安価なバイオ保存料を製造することを目的としています。発酵食品の品質向上を促進するのに大変適した研究ですが、カンボジア国内では手つかずの分野となっており、研究を進めていくにあたって、よりやる気がわいてきます。

国連大学キリンフェローシップに選ばれて、母国カンボジアの発展のためにこの分野での研究をさらに進める機会を得ることができてとても幸運だったと思っています。このプログラム参加後、特にカンボジア国内で広く消費されている「シエン」などの発酵食品の生産基準を改善し、引き上げることが出来ると確信しています。また、カンボジアでの食品安全対策のために、新たなバイオ保存料技術を導入することが出来るでしょう。

このプログラムによって私たちが享受できるメリットを明確にするために、私が参加している社会事業についても少し紹介させて下さい。私は国家標準協議委員会に、必要に応じて技術面のアドバイスなどを熱心に行う、ボランティアコンサルタントとして参加しています。役割として具体的には、開発政策に参加したり、穀物、果物、野菜などの製品基準を策定する技術委員会(TC4)のワーキングプログラムに参加しています。国連大学キリンフェローシップで得る新たな知識は、近い将来、結果的にこれらの社会事業にも活かされることになるでしょう。

最後となりますが、人々の健康増進を目指して開発途上国での人材を強化するためにこのプログラムを設立した、食品総合研究所(NFRI)と国連大学キリンフェローシッププログラムに深く感謝しています。日本の非常に印象的な文化、優れた環境、快適な生活事情、親切で優しい人々、そして物事を効率よく学べるよう私を支えてくれる日本の優秀な科学者の方々と働くことは、とても素晴らしく忘れがたい経験です。さらに、先進的分析をするために設備が整ったNFRIの食品衛生ユニットで働くことが出来て、とてもうれしく思います。私たちが研究をするために、充実した近代的設備が用意されていたことは、とりわけ光栄でした。 私のアドバイザーである稲津康弘博士と、コーディネーターでいつも私の生活や研究環境を気にかけてくれるハギワラマホさん。そして優しく寛大で、常に議論やサポートによって協同研究を可能にしてくれる、同僚たちへの感謝の気持ちを決して忘れません。

ヤスミン サビーナさん(Sabina Yeasmin)バングラデシュ出身

出身国での所属 ダッカ大学 遺伝子工学・バイオテクノロジー部門 教授
研究テーマ ナスの特定系統分類群遺伝子の検知手法の開発
研究室 GMO検知解析ユニット
アドバイザー 橘田 和美 ユニット長

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第一にお伝えしたいことは、2015年-2016年の国連大学キリンフェローシッププログラムに参加する機会を与えていただいたことへの、多大なる感謝の気持ちです。 私は大阪府立大学の卒業生なので、日本を訪れたのは今回が初めてではありません。日本の素晴らしい労働・生活環境を知っており、そのため、私は日本に再び戻ってきたいと考えていました。

今回の私の研究テーマは「ナスの特定系統分類群遺伝子の検知手法の開発」です。この研究は、世界の植物遺伝的多様性をより幅広く活用していくために必要な研究です。農家や品種改良家が、選定や品種改良の過程において、新たなより生産性の高い作物を開発する選択肢をもたらすことに繋がるでしょう。

素晴らしい研究施設、質の高い専門分野、利用可能な消耗品、最高の研究環境、そして思いやりがあり協調的なスタッフとともに過ごす機会を持てたことを、とても光栄に思います。

皆さんの親切さや寛容さ、そしてホスピタリティー、さらに研究室の仲間の規則正しさや勤勉さに、いつも感激し、感謝しています。嬉しいことに毎週金曜日に私のアドバイザーが「よい週末を」と言ってくれることに、最近では慣れてきました。現在、研究室で行っている最先端の研究は、自国の研究所で役立つことでしょう。この素晴らしいフェローシップでの研究体験を成し遂げることを楽しみにしています。

ユリアナ ナンシー デビさん(Nancy Dewi Yuliana)インドネシア出身

出身国での所属 ボゴール農業大学 食品科学工学部 主任准教授
研究テーマ メタボロームアプローチを用いた米糠由来の免疫調節機能を有する成分の同定
研究室 機能性成分解析ユニット
アドバイザー 後藤 真生 主任研究員

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インドネシアと日本は、米の生産量の多さでは、世界各国の中でも上位11か国に含まれます。これらの国では米糠が豊富に得られますが、特にインドネシアでは、米糠は低価値の精米かすとみなされ、一般的には家畜飼料として使われています。実際は、米糠は多くの健康に有益な植物化合物が含まれていると報告されています。

私の研究は、生体外もしくは生体内でマクロファージ炎症性メディエーターの変異を観察することによって、インドネシアおよび日本を原産地とする、異なる品種の米糠抽出物の免疫調節作用を研究することが目的です。日本の白米の米糠、インドネシアの黒米の米糠、インドネシアの赤米の米糠、そしてインドネシアの白米の米糠の、4種類の米糠が研究されています。

食品成分の免疫調節特性を評価するための改良法は、私が研究室として選んだ、機能性成分解析ユニットの研究者たちによって開発されました。彼らは、食品成分のORAC値を測定する手法も開発・検証しました。米糠の機能特性を調査するためにこの研究期間に高度な技術を学びたいと願っています。うまくいけば、研究結果は米糠が健康に有益な特性を持つと科学的に説明することに貢献し、米糠の経済的価値を高めることになるでしょう。

日本の科学者と働くことは今回が初めての経験です。皆さんの勤勉さにとても感銘を受けています。特に、機能性成分解析ユニットの一員でいる事はとても幸運だと感じています。私のアドバイザーや研究室の皆さんはとても親切で私を助けてくれます。総じて、日本人の礼儀正しさと規律にも感銘を受けています。最後となりますが、日本のサツマイモとかぼちゃが大好きです。最高においしいです!!!

ウドムラティ サンサニーさん(Sunsanee Udomrati)タイ出身

出身国での所属 カセサート大学(IFRPD) 食品化学・物理学部 研究員
研究テーマ キシロオリゴ糖脂肪酸安定化エステル単分散O/Wエマルションの製造、理化学性、安定性
研究室 先端加工技術ユニット
アドバイザー 小林 功 主任研究員

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国連大学キリンフェローシッププログラムに深く感謝し、感銘を受けています。マイクロチャネル乳化による安定化単分散O/Wエマルションの油滴の特性と安定性に対するキシロオリゴ糖脂肪酸エステルの効果を調査することと、体外での胃小腸消化中のエマルションの液体消化に対するキシロオリゴ糖脂肪酸エステルの影響を理解するという、素晴らしい機会をいただきました。

日本でのどんな経験も私にとって特別であり、驚くことばかりです。日本人の勤勉さ、丁寧で規則正しい佇まい、さらに温かな歓迎の心を実際に目の当たりにすると、なぜ日本が研究や技術においてこれほど進んだ国なのかがよくわかります。また、日本の文化や技術革新を勉強する機会もいただきました。

日本の生活の中で、私は友人や同僚と、生涯にわたる友情を育んでいます。その全ての時間が母国タイに帰っても決して忘れない、貴重な思い出です。国連大学キリンフェローの一年間で得た知識と経験は、カセサート大学で過ごす私の日々に活かされるでしょう。最後となりますが、この特別な機会にとても感謝しています。国連大学キリンフェローの仲間たちと日本で過ごす時間の、一瞬一瞬を大切にしていきます。

グエン ティ トゥエット ニュンさん(Nguyen Thi Tuyet Nhung)ベトナム出身

出身国での所属 ベトナム科学技術院 バイオテクノロジー研究所 研究員
研究テーマ ベトナムの発酵食品の潜在的抗肥満ラクトバチルスプランタルム属の分離、同定、特性
研究室 機能性評価技術ユニット
アドバイザー 小堀真珠子 ユニット長

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初めに、この素晴らしい機会をわたしに提供してくれたベトナム科学技術院バイオテクノロジー研究所(IBT-VAST)、国連大学、キリンホールディングス株式会社そして食品総合研究所(NFRI)に感謝の気持ちをお伝えします。カナダでの博士課程在学中に、日本的な物事に対する観点や労働倫理に関心を持ったことから、少しの期間でも日本に住む機会があればいいなと思っていました。実際に訪れる機会をいただいて目にした日本は、自然と人の美しさを兼ね備えた素晴らしい国です。

国連大学キリンフェローとして日本に来たとき、筑波では長い桜並木が満開に咲き誇っていました。現在、私はNFRIに属する機能性評価技術ユニットで働いています。ここにきて2カ月が経ちますが、NFRIは誰もが経験すべき場所だと感じ、この研究室と組織の一員であることを光栄に思います。

NFRIは、私たちが快適に暮らしているゲストハウスから、歩いてたった3分ほどの距離にあります。その他の必要な施設は、便利な公共交通機関を利用すれば行けますし、自転車でも行ける距離にあります。

設備面ではNFRIの利便性のおかげで、二型糖尿病患者のためのある補足的な細菌を探求するという、私にとって関心が深い研究分野に集中して取り組めています。アドバイザーや研究室の仲間はとてもフレンドリーで親切です。また、他のフェローとは日本語の授業を受けて日本文化や伝統を探索したり、卓球やテニス、買い物に出かけたりして、お互いに学び合い、とても良い時間を過ごしています。今後も、たくさんの機会に出会い、豊富な経験ができることを楽しみにしています。