インタビュー 復幸まちづくり女川合同会社 阿部さん

  • ここにしかないもの、それを伝えるのが自分達の役割。復幸まちづくり女川合同会社 代表社員 阿部 喜英さん

女川駅前にひらけた商店街のつきあたり、海をひろく望む場所にある女川水産業体験館「あがいんステーション」。女川発の水産物や加工品のブランドである「あがいん(again)おながわ」のブランド育成、そして女川にしかない価値を“体験”できる水産業体験の場として、女川町のメンバーとキリンで育ててきた、キリンと女川の絆を象徴するシンボルのひとつでもある。

目指すのは「復興」ではなく「復幸」

震災の直後から、「復興」ということについて考えていたんです。
津波で家や店は全部流されてしまった。そして、自分達はこれからどうするのがいいのか・・・そう思った時、町が元の形に戻るとか、建物が新しくできるというのが復興じゃなくて、女川人の一人ひとりが心から幸せを感じることが本当の意味での復興ではないかと考えました。
まちづくりのための会社をつくろうという時にもこの名前を使いたいと思って提案したら、一緒に会社を立ち上げたメンバーだけでなく、地元のみんなも使ってくれて。想いは一緒だったんだなと。

女川人の誇りでもある「海の恵み」を事業にしたい

震災直後、女川町からはたくさんの人が去りました。でも、自分達の事業を含めなんとかしたい、それも女川町でやりたいと考えていたメンバーを中心に「復幸まちづくり女川合同会社」を設立しました。その中で生まれたのが、女川人の誇りでもある海の恵み「水産加工品のブランド化と販路拡大」そして「水産業体験プログラムの構築」という事業計画でした。

本気の厳しさに、中途半端なことはできないなと

その事業を進めるために「絆プロジェクト」に応募しました。最初に事業計画書を提出した時点では、ハード面の支援だと思っており、当時不足していた仮設施設への支援として応募しました。しかし、その後のランニングコストの問題を懸念しソフト面の申請もしたところ、ちょうど「絆プロジェクト」もソフト面に支援フェーズを転換していたこともあり、スムーズに計画を進めることが出来ました。しかし提出した事業計画の精度や今後の売上計画のチェックなどはかなり厳しく審査され、キリンの担当者の本気を感じました。これは「支援」ではなく事業への「投資」に近い、中途半端なことはできないなと(笑)。

「女川人」としての目線に心が動いた

キリン絆プロジェクトだけでなく、様々な支援や助成金をいただいていますが、キリンの担当者の方の「女川で良いものを作って広めることが、キリンにとっても財産になるしビジネスにもつながる。とにかく女川の良いものをみんなで発信ください」という言葉がとても嬉しかったです。担当の方々には何度も女川に足を運んでいただいていますが、企業というより一人の人として、それぞれが女川のことを想って提案してくれているなと感じます。

女川の常識は、世間の非常識

震災後、はじめて知ったことがたくさんあったんです。 女川で当たり前のことが、特に都市部から来る方々にとってはとても変わったことだったりすること。例えば、港町で漁船からの水揚げ風景、養殖されている魚介類の海中での姿、魚の捌き方、そういう「女川の常識」が町外から来る皆様にとってはとても価値のあることだと気付いたんです。震災で失った物は大変大きかったのですが、キリンの担当の方におっしゃって頂いた言葉に応えるためにも、もっと食べ物、体験、風景、「女川にしかないもの」を再発見し発信していきたいです。