シナリオ分析(TCFD)

TCFD提言に基づく開示

2022年の「TCFD新ガイダンスに基づく開示」と「移行計画」は、以下で開示しています

はじめに

キリングループのほとんどの事業では農産物と水を加工し、容器に入れて商品としてお客様にお届けしていますが、その過程で発生した温室効果ガスで気候変動が深刻になれば最も影響を受けるのは原料である生物資源と水資源であり、自然資本に大きく依存した企業と言えます。この認識の下、TCFD最終提言が公表される以前の2010年頃より、自然資本に関するさまざまなリスク調査を行ってきました。2017年にTCFDの最終提言が発表された後すぐにシナリオ分析を開始し、2018年6月末にいち早く「キリングループ環境報告書2018」でTCFD提言に沿った開示を行うことができたのは、このようにバリューチェーン上のリスク評価に対する長年の知見が蓄積できていたからだと考えています。
当社グループの事業は、いずれも直接的に自然資本の恩恵で成り立っています。このような事業特性を反映して「キリングループ環境ビジョン2050」では 「生物資源」「水資源」「容器包装」「気候変動」の4つを重要課題として設定しています。
事業の大きな部分を占める地域は日本とオーストラリアです。グローバルで見たときに比較的水が豊富な日本と比べ、オーストラリアは水ストレスが大きな国であり、実際に大規模な渇水を継続的に経験しています。このような2つの大きく異なる国で事業を行ってきたために、当社グループは水リスクや水ストレスが国や地域で大きく異なることを経験的に理解してきました。主力ブランドである「キリン 午後の紅茶」が茶葉を大きくスリランカに依存していることもあり、企業の価値創造とリスクの源泉である自然資本の依存度と影響が場所によって異なることも認識していました。
このように、「キリングループ環境ビジョン2050」の4つの重点課題が場所に依存すると同時に独立した課題ではなく相互に関連していることを認識し、全体的・統合的(holistic)に解決するのが当社グループのアプローチです。

開示のフレームワーク

「TCFD提言に基づく開示」では、自然資本への依存度が高い事業特性を背景として、当社グループが脱炭素社会に適応できるように適切に事業を移行し、レジリエンスを高め、脱炭素社会をリードするために、気候変動の影響をどのように評価・分析し、緩和と適応を適切に戦略に組み込んで推進しようとしているかを、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークを使って説明しています。2022年の報告では、2021年10月に公開されたTCFDの新しいガイダンス※1を参考にしています。事業にとって重要な自然資本(生物資源・水資源)の開示については、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワーク案※2を参考としつつ、その枠組み自体が開発途上であることから、TCFDのフレームワークに沿った気候関連情報と合わせて本「TCFD提言に基づく開示」の中で開示しています。

  1. Guidance on Metrics, Targets,and Transition Plans(October 2021)、Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures(October 2021) 「 TCFD 指標、目標、移行計画に関するガイダンス」および「TCFDの提言の実施(2021年版)」
    https://www.fsb-tcfd.org/publications/
  2. The TNFD framework beta v0.1
    自然資本の「LEAP(Locate, Evaluate, Assess,Prepare)」アプローチや「AR3T」フレームワークでの整理については、下記で開示しています。
    https://framework.tnfd.global/wp-content/uploads/2022/06/TNFD-Full-Report-Mar-2022-Beta-v0-1.pdf

気候変動に対する移行計画

2017年から継続して実施しているシナリオ分析では、気候変動が当社グループの重要な原料である農産物の大きな収量減、水ストレス・水リスク、エネルギー費用増大を引き起こすことが分かっています。GHGはどこで排出しても温暖化につながるためグローバルな環境課題であり、等しく責任があります。この危機に対応するために、当社グループは気候変動を緩和するためのロードマップを策定し、経営戦略会議で審議・決議して2022年1月より運用を開始しています。実行にあたっては、経済性と環境の両立を目指してグループ全体で2030年までは損益中立でのSBT1.5℃目標の達成を目指します。適応策については、持続可能な農産物生産や水ストレス対応などを非財務目標として経営計画に組み込んでいます。

概要

取り組み内容

2021年~2022年の進捗

ガバナンス

  • 気候変動問題を含めた環境全体の基本方針などの重要事項:取締役会で審議・決議
  • 「SBT1.5℃」目標へのアップグレード、RE100への加盟などの目標設定:経営戦略会議で審議・決議
  • グループ会社の経営計画への組み込み:非財務KPIの1つであるCSVコミットメントに設定
  • グループ横断的な環境問題への対応:キリンホールディングスの社長を委員長、主要グループ会社の社長とキリンホールディングスの役員を委員とする「グループCSV委員会」(年3回)で議論、決定事項は取締役会に上程
  • 取締役会への報告・レビュー:環境経営の進捗状況や環境課題に関わる事業のリスクと成長機会(毎年)
  • グループCSV委員会の開催回数を増加(年1回→年3回)
  • グループ環境会議(年2回)を設置
  • TCFD新ガイダンスに準拠した開示
  • 役員報酬に連動する非財務目標指標にGHG排出量削減を設定

ガバナンス

戦略

  • 長期戦略「キリングループ環境ビジョン」改定のインプット:2015年のパリ協定採択、2018年のIPCC「1.5℃特別報告書」やシナリオ分析の結果
  • 緩和策:「SBT1.5℃」目標へと上方修正。RE100に加盟して再生可能エネルギーを拡大
  • 適応策:大麦に依存しない代替糖の活用技術や植物大量増殖技術、用水削減技術、持続可能な農園認証の取得支援
  • 事業機会:熱中症や感染症の拡大など気候変動がもたらす社会課題に対するソリューションとなる商品の提供
  • 事業会社の業績評価に連動するCSVコミットメントで全事業会社のGHG排出量削減目標を設定
  • 大規模太陽光発電をPPA方式(横浜工場除く)でキリンビール全工場に設置
  • キリンビール名古屋工場に続き仙台工場でも調達電力の再生可能エネルギー100%を達成
  • シャトー・メルシャンの3つのワイナリーの調達電力の再生可能エネルギー比率100%を達成

戦略

リスク管理

  • 気候変動関連のリスクも含めたリスクマネジメント:グループリスク・コンプライアンス委員会で管理(4半期毎)
  • 起こる可能性は分からないものの起きた場合に事業に極めて大きな影響を与えるリスク対応:シナリオを設定して分析・評価することで重要リスクを抽出・検討する新しいアプローチの導入・運用
  • オールハザード型BCP稼働開始

リスク管理

指標と目標

  • 長期目標:2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出量をネットゼロ(「SBTネットゼロ」目標承認取得済み)
  • 中期目標: 2030年までに2019年比でScope1+2で50%削減、Scope3で30%削減
  • 再生可能エネルギー:使用電力の再生可能エネルギーを2040年に100%(RE100加盟)
  • その他:各事業会社がCSVコミットメントとして設定
  • Scope1+2:13%削減  (2019年比、2021年末実績)
  • Scope3:12%削減  (2019年比、2021年末実績)
  • TCFD新ガイダンスに準拠した開示
  • 役員報酬に連動する非財務目標指標にGHG排出量削減を設定

指標と目標

シナリオ分析と戦略への反映

指標と目標

GHG排出量削減実績

Scope1、Scope2、Scope3およびバリューチェーン全体のGHG排出量削減の推移は以下の通りです。