TCFDフレームワーク・TNFDフレームワーク案などに基づいた統合的な環境経営情報開示

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)新ガイダンス対応およびTNFDフレームワーク案などに基づいた統合的な環境経営情報開示は、環境報告書2023年版で開示しています。
以下をご覧ください。

統合レポートの中でも開示しています。

概要

以下は、環境報告書2023で開示している「TCFDフレームワーク・TNFDフレームワーク案などに基づいた統合的な環境経営情報開示」の抜粋となります。
詳細は、環境報告書2023をご覧ください。

本パートでは、キリングループが気候変動に対するレジリエンスを高め、適切かつ継続的に自然資本を利用し、循環型社会の構築に貢献するために、気候変動の影響や自然資本・容器包装の課題をどのように評価・分析し、緩和や適応などの移行戦略を推進しているかを説明します。TCFDフレームワークだけではなく、2022年に世界に先駆けたLEAPアプローチの試行、シナリオ分析のパイロットテスト参加などTNFDへの対応から得られたTNFDフレームワーク案に関する知見も取り入れて、可能な範囲で統合的に説明しています。
記載においては、2018年6月に公開されたTCFD最終提言、2021年10月に公開されたTCFD新ガイダンスに準拠し、2022年3月から23年3月に掛けて順次開示されてきたTNFDフレームワークβ版 v0.1~0.4、および一部でISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が2023年6月26日に正式に公表したサステナビリティ情報開示基準(S1)と気候関連情報開示基準(S2)などを参考として説明します。
対象事業、時間軸、シナリオ、戦略への反映、参照情報および算出補法、第三者保証についての詳細は、下記をご覧ください。

ガバナンス

監督体制および執行体制の詳細については、下記をご覧ください。

スキルマップおよびコンピテンシーは、以下で開示しています。
https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/governance/provisions/

役員報酬と中期経営計画に掲げる主要な経営指標の1つである非財務指標の関係は、下記の図の通りです。詳しくは、下記をご覧ください。
https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/governance/conpensation/

グループ/事業会社の経営計画に組み込んだ2022年−2024年CSVコミットメントは、下記で開示しています。
https://www.kirinholdings.com/jp/impact/csv_management/commitment/

監督体制および執行体制およびその役割・権限、メンバー、会議体の開催頻度、実績は以下の通りです。

環境関連課題のガバナンス体制

  1. キリンビール技術部長。その他明記がない所属はキリンホールディングス。

リスク管理

シナリオ分析で検出された重要な気候変動の物理的リスクと移行リスクへの対策は、マネジメントによって緩和・適応戦略に展開され、取締役会の監督の下で目標管理されています。自然資本への依存度・影響度、循環型社会構築を含むサステナビリティ関連リスク全般についても同様です。
重要リスクのモニタリング体制と、気候変動がもたらす急性リスクへの対応の詳細、重要なリスクと機会の詳細ついては、下記をご覧ください。

リスクマネジメント体制、およびリスクマネジメントのPDCAは、以下の通りです。

  • リスクマネジメント体制

  • リスクマネジメントのPDCAサイクル

戦略

戦略のパートでは、財務へのインパクト評価、気候変更に関するシナリオ分析、自然資本に関するリスクと機会を含むレジリエンス評価の詳細について説明します。

インパクト評価結果

気候変動・自然資本・循環型社会による財務へのインパクト評価の詳細は、以下をご覧ください。

2017年以降、継続的に気候変動のシナリオ分析を行うことで、気候変動によるリスクと機会の把握レベルと戦略を向上できました。自社製造拠点に加え、農産物の収量や調達コスト、カーボンプライシングなども財務インパクトの分析対象としています。
自然資本・容器包装のインパクト評価は、依存性や影響なども考慮し、試算しています。
気候変動と自然資本は相互に関連があるため分離して評価できない領域があり、TNFDフレームワークβ版の中でも、気候変動のシナリオ分析結果を自然資本のシナリオ分析として利用できる領域が存在することが示されています。現時点で合意された自然資本のシナリオがほぼ存在しないことを考慮し、従来から開示している洪水や渇水によるインパクト試算は、気候変動と自然資本の両方の物理的リスクとして位置づけし直して開示しています。PETボトルによる自然資本へのマイナスの影響も試算し、自然資本と容器包装のリスクとして開示しています。自然資本に関するリスクや機会の財務インパクトを算出する方法論は発展途上の領域であるため、現時点で把握可能なインパクトを開示対象としました。
主な試算結果は、以下の通りです。

財務影響

  1. 気候変動の物理的リスク・移行リスクについては、2022年の調達量・コストなどを使用して算出しています。
  2. 重大だと認識したリスクと機会の財務影響を示します。気候変動による農産物収量減およびカーボンプライシングによる農産物の財務インパクトは、価格変動予測データ分布の中央値の50パーセンタイル幅で評価、1.5℃シナリオでのカーボンプライシング試算は不確実性が高いため参考値として掲載しています。カーボンプライシングは、GHG排出量削減をしなかった場合を示しています。
  3. 化学肥料削減で約0.4億円削減、バイオ肥料及び施肥人権費で約1.5億円の追加。現地コーヒー農園からのヒアリングより試算。

主な気候変動によるアセットへの影響分析結果は以下の通りです。

事業売却によるGHG排出量への影響

リスクにさらされている資産

関連資産

  • 関連設備残存簿価は、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンのボイラーの残存簿価および物流グループ会社所有のトラックの残存簿価の合計です。当該ボイラーおよびトラックは、気候変動に伴う法規制または社会的な情勢を主要因として耐用年数に達さず更新せざるを得なくなる可能性は低いと判断しています。

水ストレス地域における製造拠点の用水使用量

レジリエンス評価

気候変動に関するシナリオ分析とレジリエンス評価、LEAPアプローチによる自然資本のリスクと機会の分析、および自然資本の市アリオ分析の詳細は、以下をご覧ください。

気候変動に関するシナリオ分析

気候変動に関するシナリオ分析とレジリエンス評価、以下の通りです。

製造拠点水リスク/ストレス

気候変動による主要農産物収量へのインパクト

2050年の財務インパクト

自然資本に関するリスクと機会分析

ENCOREなどのツール類を使った自然資本のリスクと機会を行いましたが、長期に活動やエンゲージメントがある地域での知見との乖離があることが分かりました。
そこで、長年の取り組みにより対象とする「場所」と「依存性」を十分理解し、多くの関係者ともコミュニケーションを取り合ってアプローチができる事象についてLEAPによる分析を行いました。今回は、「キリン 午後の紅茶」の原料生産地として地域的な依存度が高いスリランカの紅茶農園について、 LEAP(TNFDフレームワークβ版 v0.2)を使って評価を実施しました。
LEAPのL(Locate:発見)フェーズでは、スリランカの中でも自然公園などに近い10農園を選択し、その緯度・経度を調べ、ツール類を使い生態系を把握するとともに、所在地のバイオームの調査も行いました。
さらに、検討対象地域の生態系がどれくらい人為的な影響を受けているか、保護上の重要性、水ストレスを勘案し総合的に評価を行いました。
対象農園と分析・評価結果は、以下の通りです。

対象とした10農園の分析・評価結果

LEAPのE(Evaluate:診断)のフェーズでは、スリランカで研究発表されている各種論文を使って、関連する環境資産と生態系サービスの特定を行い、依存度と影響を把握しました。
その結果、把握された課題と2013年から継続している認証取得支援の活動内容がマッチしていることが分かりました。
評価結果は、以下の通りです。

「依存」に係るリスクと機会、既存の活動

「影響」に係るリスクと機会、既存の活動

  • スリランカの紅茶農園で実施しているレインフォレスト・アライアンス認証取得支援で実施しているトレーニングが、LEAPのAssess(評価)フェーズで把握できたリスクの低減や機会の拡大に貢献していると判断できる活動

自然資本のシナリオ分析

TNFDからキリングループに対してパイロットテストへの参加要請があり、これに応じて2023年3月に、水ストレスが非常に高いアメリカのコロラド州のクラフトブルワリーであるニュー・ベルジャンで、シナリオ分析のワークショップを実施しました。
詳細は、環境報告書2023および、2023年4月に公開されたTNFDフレームワークβ版 v0.4をご覧ください。

  • TNFD Beta v0.4 Annex 4.10 Additional guidance on scenario analysis
  • TNFDで提言されているシナリオ分析の軸と分析結果

  • コロラド州を流れるコロラド川、干ばつで水位が低下したパウエル湖

環境課題へのアプローチ

キリングループの環境課題に対する戦略の中心にあるのが、「生物資源」「水資源」「容器包装」「気候変動」という環境ビジョンの重要4テーマに個別に対応するのではなく統合的にアプローチすることが重要だという考え方です。
レジリエンス評価を受けた、環境課題へのアプローチの詳細は、以下をご覧ください。

気候変動に対する戦略と進捗、自然資本に対するAR3Tに準拠した開示は、以下の通りです。

気候変動に対する戦略と進捗

  1. 自然を基盤とした解決策(Nature-based Solutions)のことで、気候変動や自然災害、人の健康など、社会を取り巻く課題を自然に根差して解決を目指す考え方。NbSの概念は、2 0 0 9年にIUCNが提唱し、2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で気候変動問題の解決策として大きく取り上げられて注目を浴びている。
  2. 企業がネイチャー・ポジティブを目指すためのき行動の枠組みとして提言されているもので、自然の毀損回避(Avoid)、低減(Reduce)、再生および回復への貢献(Restore and Regenerate)、根本的なシステム変革(Transform)の4段階構成となっている。

自然資本に対するAR3Tに準拠した開示

移行計画

「気候変動」「自然資本」「容器包装」の移行計画についての詳細は、以下をご覧ください。
尚、それぞれの課題に相互関連性があるため、個々の移行計画だけではなく、関係する内容についても言及しています。

気候変動の移行計画自然資本のシナリオ分析

気候変動の移行計画に関するロードマップおよびScope1 とScope2 の排出量削減、投資額は以下の通りです。
移行計画の詳細、自然資本・容器包装の移行計画は、環境報告書2023をご覧ください。

ネットゼロに向けたロードマップ

Scope1とScope2の排出量削減

投資額

指標と目標

指標と目標の詳細は、以下をご覧ください。

指標と目標

目標と投資額

目標

投資計画と資金調達

目標
  • Scope1とScope2合計排出量の目標、Scope3排出量の目標

  • 2020年12月に従来の「SBT2℃」目標から上方修正し、「SBT1.5℃」目標として認定されました。
達成状況
  • バリューチェーン全体でのGHG排出量の推移、GHG排出量中期削減目標に対する進捗、再生可能エネルギー使用拡大目標に対する進捗

  • バリューチェーン全体でのGHG排出量の推移、GHG排出量中期削減目標に対する進捗、再生可能エネルギー使用拡大目標に対する進捗

  • Scope3排出量について、2019年以降でライオンの飲料事業を除外し、排出原単位を国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以後、産総研)が提供するLCAデータベース(IDEA)へ変更しています。

指標

SBTによるGHG排出量中期削減目標に対する進捗(2022年)
  • Scope1+2,Scope3

循環型社会の影響(2022年)
  • 負荷削減量

  • 負荷削減量

自然資本の指標(2022年)
  • 直接、バリューチェーン上流、バリューチェーン下流

  • 直接、バリューチェーン上流、バリューチェーン下流

  1. 自然資本の指標は、TNFDフレームワークβ版v0.4で示されたコア指標案および農業・食品セクターの指標案を参考に、現時点で把握できている指標または関連すると思われる指標を試行的に開示しています。
  2. 資源削減量は1990年と2022年の容器重量差に報告対象年度の容器使用量(びんは新びん投入本数)を乗じて算出。土地利用面積は2014年のESCHERを使用した算出。その他は、進捗状況 、ESG Data Bookから転載しています。
    ESG Data Book https://www.kirinholdings.com/jp/investors/files/pdf/esgdatabook2023.pdf