CSV戦略担当役員メッセージ

『社会的価値とともに、競争力強化と事業の成長という経済的価値を創出』
~CSV経営の深化に向けて非財務視点をより強化していく~

常務執行役員
溝内 良輔

中計非財務指標の設定

Q
2019年中計で初めて非財務指標をKPIとして設定されましたが、設定された理由と現在感じておられる課題について教えてください。
A

従来の財務KPIに加えて「CSVコミットメント」「企業ブランド価値」「従業員エンゲージメント」という3つの非財務KPIを設定した狙いは、短期的利益のみならず中長期的な成長の持続を担保し、アウトプットが経済的価値と社会的価値につながっていることを監視していくことにあります。
CSVコミットメントは「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」「酒類メーカーとしての責任」の4つのCSVパーパスを事業会社のアクションプランに落とし込んだものですので、戦略のモニタリングのためのKPIに設定しました。2020年から役員報酬に連動させていますが、環境以外は成果の尺度としてマイルストーンが不十分なものも多いため、今後も改善を継続していきます。
事業活動のアウトプットでもありインプットでもある企業ブランドの価値は、事業会社の目標設定や評価で活用しています。一方、企業ブランドの評価方法は普遍性や透明性に課題があり、対外的にコミットする難しさも感じています。
従業員エンゲージメントも企業ブランドと同様、事業のアウトプットかつインプットとしてモニタリングしています。人財の重要性は、コロナ禍の中で再認識されています。弊社でも本年から従業員エンゲージメントを役員報酬の指標に加えると同時に、役員長期報酬に連動する非財務KPIの比率を10%から20%へと増やしました。
事業戦略との繋がりや、経済的価値や社会的価値との繋がりがわかりやすい非財務KPIにしていくことが課題と認識しており、次期中計の策定に合わせて抜本的に見直す計画にしています。

コロナ禍の経験

Q
コロナ禍による外部環境変化は、非財務面でどのような影響がありましたか。
A

キリングループが掲げている4つのCSVパーパスのマテリアリティを、改めて確認することができました。
「健康」の重要性が再認されたのは言うまでもありません。中でも感染リスクに直面して、免疫機能が注目されました。昨年免疫機能において初めて機能性表示が消費者庁に受理されたプラズマ乳酸菌などの機会を活かし、ヘルスサイエンス事業を拡大していきます。
人との接触が制限されたことで、「コミュニティ」の大切さも痛感しました。お酒や清涼飲料が持つ、コミュニケーションを促進してソーシャルキャピタルを築く役割が見直される一方で、人目の届かない一人飲みのリスクやパンデミックで拡大したeコマースの規制強化の必要性など、「酒類メーカーとしての責任」も高まりました。
パンデミックと同様、警鐘が鳴らされてきながら対策が十分とはいえなかった「環境」のロングテールリスクへの対策も、菅内閣の脱炭素社会宣言に見られるように、先延ばしできない課題として認識されるようになりました。
2020年年初以降直近までのキリンの株価のβを週単位で見ますと、以前より低下しています。算出期間がまだ短く、また医薬セクターの事業を保有している影響もあるとは思いますが、ESGに取り組んできたことでコロナ禍でも資本コストを下げられている可能性もうかがえました。
日本の食品企業としては初めてのSBT1.5℃への更新、2040年までに再エネ100%化を目指したRE100への参画、国内飲料事業の容器包装の100%FSC化など、環境対策でリーダーシップを発揮しているように、CSVパーパスの更なる追及を通して、キリングループはコロナ禍からの”Build Back Better”や”Green Recovery”に貢献していきたいと考えています。

PDCAサイクルの強化によりCSV経営を加速

Q
KV2027に向けて、新中計が次年度から始まりますが、CSV戦略担当役員としてのお考えをお聞かせください。
A

KV2027で掲げた「世界のCSV先進企業となる」、という目標に向かって前進するのみです。
キリングループは本年昨年と2年連続で、環境省のESGファイナンス・アワード・ジャパンの環境サステナブル企業部門で金賞を受賞し、「世界のCSV先進企業としての地位を確立すべく、取り組みをより進化させ、グループ企業へのより一層の浸透を通じて、世界屈指のESGリーディングカンパニーとなることを期待したい」と高くご講評いただきました。この期待に副い続けることが、キリングループの役割です。
その一環として、SBT Networkのコーポレート・エンゲージメント・プログラムに加盟してSBTの新たな枠組みの策定に参画したり、AEPW(Alliance to End Plastic Waste)に加盟してグローバルなプラスチック問題に参画するなど、ルール・テイカーからルール・メーカーへ、国内から世界へと、活動をレベルアップしていきます。
新中計の策定に際しては、グループ・マテリアリティ・マトリックスを粒度を高めて更新し、CSV戦略の優先順位の解像度を上げることで、グループ全体と各事業会社のベクトルを合わせていきます。
更に新中計の先にある「世界のCSV先進企業」という目標を達成するには、世界トップレベルのコーポレートガバナンスが不可欠です。取締役会議長は独立取締役、取締役会の過半数は独立取締役、外国籍取締役と女性取締役は夫々複数といった体制をより進化させていくとともに、リモート会議の活用や実質的な審議時間の拡大といった運用の改善を継続し、取締役会の監査機能と透明性を一層高めていきます。