2007年9月14日

食用きのこ「ブナハリ茸」の抗酸化作用に関する研究成果について

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)の基盤技術および次世代技術の開発を担うフロンティア技術研究所(横浜市金沢区、所長 石井康之)は、ブナハリ茸の抗酸化作用について、培養細胞や動物(マウス)を用いた試験により確認しました。
 当研究所では、既にブナハリ茸の血圧を適正に保つ作用について確認しています。今回、抗酸化作用についての新たな可能性が認められたことから、今後も研究を継続します。

 ブナハリ茸は、主に東北地方のブナの森に自生している食用きのこで、人工栽培が困難といわれていますが、当社はビールの仕込み粕の有効利用に関する研究の一環として、世界で初めてブナハリ茸の菌床栽培に成功し特許を取得しました。また、ブナハリ茸の生理作用や機能性についての研究を行い、2003年には動物試験とヒト試験による血圧に対する作用を確認しています。
 今回、ブナハリ茸の新たな可能性として抗酸化作用に着目し、培養細胞や動物(マウス)を用いた試験により、抗酸化・解毒作用に関連するタンパク質Nrf2※1活性化作用および抗酸化・解毒関連酵素の発現上昇作用について研究しました。

※1 細胞の中にあるタンパク質の一種で細胞が酸化ストレスに晒されると核に移行し抗酸化・解毒酵素の発現を活性化させる。

 マウスの肝由来の培養細胞にブナハリ茸から抽出したエキスを添加し、抗酸化・解毒酵素の1つであり、活性化されたNrf2によって発現が上昇するキノンレダクターゼの発現量を測定したところ、何も添加しなかったものと比較してブナハリ茸を加えた培養細胞でのキノンレダクターゼの発現量上昇が認められました。この結果から、ブナハリ茸エキス中に酸化ストレスに起因する障害を抑制する作用があるものと想定し、酸化ストレスを与えた培養細胞での細胞生存率を測定したところ、ブナハリ茸エキスを添加した培養細胞の生存率が高いことがわかりました。
 これらの作用がブナハリ茸のNrf2の活性化を介して起こっているかについての検証として、ブナハリ茸エキスのNrf2活性化作用をレポーターアッセイ※2による蛍光強度によって評価したところ、ブナハリ茸エキスを添加した細胞では、何も添加しなかった細胞と比べて蛍光強度が増加したことから、ブナハリ茸エキスにはNrf2を活性化する作用があることが示唆されました。
 また、培養細胞で認められたブナハリ茸の作用が、経口摂取した際に生体内で認められるかどうかについて動物(マウス)で評価した結果、ブナハリ茸エキスを摂取したマウスに抗酸化・解毒関連酵素の発現量の上昇が見られました。このことから、ブナハリ茸エキスは生体内でもNrf2を活性化することが示唆されました。

※2 Nrf2の活性化作用を蛍光色素を持つタンパク質の発現量で測定する方法。活性化作用が高いと蛍光タンパクが多く発現し、結果、蛍光強度として観察ができる。

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