2007年9月20日

緑茶葉の元素組成解析による産地判別法の開発について

 キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)のフロンティア技術研究所食品安全科学センター(高崎市、所長 石井康之)は、食品の品質に対する関心の高まりの中、独立行政法人野菜茶業研究所と共同で、急速に市場を拡大している緑茶の茶葉について、元素組成分析に基づく科学的かつ客観的な産地判別法を開発しました。その手法について9月20日の日本分析化学会にて発表しました。

 近年、食品の原産地表示偽装問題が懸念される中、お客様の食品に対する品質および安全性に対する関心はいっそう高まっています。
 こうした背景の中、様々な農産物の原産地を判別するための研究が数多く進められていますが、当社は、科学的・客観的な産地判別法として元素組成を用いた緑茶葉の原産地判別に着目しました。

 農作物については、栽培された土壌の違いがその元素組成に大きく反映されることが知られています。そこで当社は、緑茶葉試料213点(中国産38点、国内産175点)に対して元素組成を分析し、独自の産地判別法を開発しました。
 まず、緑茶葉試料0.2gを溶液化した後、ICP-MS※1によりアルミニウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛など約30元素の含有量を測定し、213点の分析データのうちから任意に選んだ20点(中国産5点、国内産15点)を検証用のデータとし、残りの193点のデータ(中国産33点、国内産160点)を判別モデル作成用データとしました。このデータ193点をHCA※2(Hierarchical Cluster Analysis)でクラスター分析※3を行なったところ、データが国内産と中国産の2つのグループに分かれることがわかりました。そこで、SIMCA法※4(Soft Independent Modeling of Class Analogy)をもとに国内産と中国産の産地を判別するモデルを作成しました。その判別モデルが正しく原産地を判別できるかの検証として、20点の検証用データを当てはめた結果、中国産5点、国内産15点の全てが一致し、100%の的中率であったことから、産地判別法としての正確さが確認できました。

※1 誘導結合プラズマ質量分析計。多元素同時分析および高感度分析が可能。
※2 クラスター分析の一つ。似ているモノを順番に線で結合し、樹形図を作成することが可能。
※3 特徴が似通ったモノをグループ化する解析方法。この方法により元素組成が似ている茶葉をグループ化することができる。
※4 判別分析の一手法。判別式を用い、対象とするデータが属するカテゴリーを予測することが可能。

 当社は、酒類・飲料および食品分野の未来につながる技術を開発するとともに、お客様に安全な食品をお届けするため、原料や製品の安全性確認、新規開発商品の分析評価など、食品の安心・安全を高度に確保するための取り組みを行っています。キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。