2011年9月29日

<参考資料>
バイオマス由来プラスチックの原料となるL-乳酸をキシロースから高生産する酵母の分子育種に成功

 キリンホールディングス株式会社(社長 三宅占二)のフロンティア技術研究所(横浜市金沢区、所長 水谷悟)は、キシロースからバイオマス由来プラスチック※1の原料となるL-乳酸を高生産する酵母を工業利用性の高いキャンディダ・ユティリス酵母(Candida utilis)から分子育種することに成功し、この研究成果を9月26日に第63回日本生物工学会大会で発表しました。

  • ※1 植物や微生物など、短期間で再生可能な生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料とした環境配慮型のプラスチックのこと。糖類を乳酸菌で発酵させて得られる乳酸を重合させた「ポリ乳酸」の実用化がもっとも進んでいる。

 地球温暖化防止は世界的な課題となっていますが、キリングループも「低炭素企業グループの実現」を中長期的なテーマに掲げ、様々な取り組みを行っており、その一環としてバイオマス由来のプラスチック原料であるポリ乳酸に関する研究を継続しています。これまでの研究で、キャンディダ・ユティリス酵母を用いて、グルコースから副産物であるエタノールを生産せずに高効率でL-乳酸※2を産生する酵母の分子育種に成功していますが、今回、バイオマスの利用範囲の拡大を可能にすべく、この育種酵母をさらに改良し、非可食系バイオマスである木質系の素材に多く含まれるキシロースから有用物質を生産できる酵母を開発しました。

  • ※2 乳酸にはL-乳酸、D-乳酸という2つの光学異性体があり、一方の比率が高いほど光学純度が高くなる。光学純度の高いL-乳酸を重合させたポリ乳酸を、光学純度の高いD-乳酸を重合させたポリ乳酸と混合することで耐久性に優れたプラスチックができる。

 これまでキャンディダ・ユティリス酵母は、キシロースを含む培地で生育できるものの、キシロースからの発酵による物質生産はできませんでした。本酵母には、キシロースをキシルロースに変換するキシロース還元酵素(XR)※3とキシリトール脱水素酵素(XDH)※4という代謝酵素がありますが、XR、XDHが作用する際に必要な補酵素のインバランスがキシロースを発酵できない原因と考え、必要とされる補酵素を変換したキシロース代謝酵素の遺伝子群を、乳酸生産能を付与した酵母株に導入したところ、約100g/Lのキシロースを含む栄養培地で、43時間後に変換効率91%という、酵母では世界最高レベルの効率で光学純度99.9%を超えるL-乳酸を生産しました。また、ビール仕込み粕糖化液からも78%の収率でL−乳酸を生産することができました。

  • ※3 キシロースをキシリトールに変換するキシロース代謝の最初の段階で作用する酵素。
  • ※4 XRの次に作用し、キシリトールをキシルロースに変換する酵素。

 本研究の結果は、工業的に利用しやすいキャンディダ・ユティリス酵母から分子育種された株が、キシロース単体および複数の糖が混在するバイオマス由来原料からL−乳酸を効率的に生産できることを示しており、今後のバイオマス利用の拡大につながることが期待されます。

 キリングループは「おいしさを笑顔に」をグループスローガンに掲げ、いつもお客様の近くで様々な「絆」を育み、「食と健康」のよろこびを提案していきます。


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