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[食領域]

<参考資料>紅茶が口内環境を整える!

~紅茶が口腔内細菌、口臭成分へ与える影響について~

  • 研究・技術

2015年8月31日

キリン株式会社

キリン株式会社(社長 磯崎功典)の飲料技術研究所(所長 出内桂二)とキリンビバレッジ株式会社の「紅茶と暮らし研究所」※1は、紅茶が歯周病菌P.gingivalisに与える影響について試験を行いました。その結果、紅茶は歯周病菌の病原プロテアーゼ※2である、Arg-gingipain(以下Rgp)およびLys-gingipain(以下Kgp)の活性を緑茶よりも強く阻害するとともに、歯周病菌の生育を緑茶と同等に抑制することが明らかとなりました※3。また、食事を想定した試験で、紅茶の飲用が口臭成分であるメチルメルカプタンを有意に抑制することが分かりました※4。

  • ※1 キリンビバレッジ株式会社が2013年11月1日に紅茶にまつわるさまざまな調査・研究を行うために設立した専門組織。
  • ※2 タンパク質分解酵素。
  • ※3 この結果は6月21日(日)に第35回日本歯科薬物療法学会学術大会で口頭発表し、「学術奨励賞」を受賞しました。
  • ※4 この結果は7月4日(土)に日本口臭学会第6回学術大会で口頭発表しました。

今回、当社では日本の成人の約8割が保有し全身疾患への悪影響などからも注目されている歯周病菌P.gingivalisに着目し、紅茶ポリフェノールが歯周病菌およびその病原因子であるタンパク質分解酵素に及ぼす影響について試験を行いました。
まず、歯周病菌に与える紅茶の影響について評価するため、紅茶および緑茶を添加したそれぞれの培地に、菌の濃度を調整した菌液を添加し、37℃で酸素を遮断して培養しました。そして、経日的に培養液を採取し、菌の濃度を測定しました。次に、RgpおよびKgpの活性阻害について紅茶、緑茶についてそれぞれ評価するため、調製した同歯周病菌液20µlに、紅茶および緑茶を20µl、1mMの基質※5 60µlずつ添加し、37℃で10分間培養した後に405 nmの吸光度を測定しました。
その結果、菌の濃度測定では歯周病菌の発育に対して、紅茶は緑茶と同程度の抑制効果を示しました。また、RgpおよびKgpの活性に対する阻害作用を検討した結果、紅茶は5µg/ml(タンニン値換算※6)でRgp活性を82.1%、Kgp活性を75.3%阻害しました。これは通常飲む紅茶を約100倍に薄めた濃度に相当することから、紅茶が強い阻害効果を持つと考えられます。一方、緑茶は5µg/ml(タンニン値換算)で33.4%および60.5%阻害しました。
従来、抗菌作用を持つポリフェノールとしては緑茶カテキンがよく知られていますが、紅茶ポリフェノールにも優れた抗菌効作用があることはあまり知られていませんでした。また歯周病菌の病原プロテアーゼへの効果も知られていませんでした。今回の試験で示されたこれらの結果は、紅茶の持つ大きな可能性を示唆していると考えられます。

  • ※5 Nα-Benzoyl-DL-arginine 4-nitroanilide hydrochloride または N-(p-Tosyl)-Gly-Pro-Lys 4-nitroanilide acetate salt
  • ※6 酒石酸鉄法による

さらに、当社では、紅茶の口臭成分であるメチルメルカプタンに対する働きを検証するため、被験者の歯磨き後に牛乳を摂取させて食事後に食べかすが口腔内に残存した状態を再現し、ディスポチューブに採取した呼気を測定※7しました。牛乳摂取直後、および2時間経過後に同成分濃度を測定し、その2時間経過の間に紅茶または湯を飲用した場合の成分濃度の上昇率を比較したところ、飲用前のメチルメルカプタン濃度を1とした時に、湯飲用後は平均2.6と増加していたのに対して、紅茶飲用後は平均0.4であり、紅茶の飲用で、メチルメルカプタンの増加が有意に抑制されることが確認されました。

  • ※7 センサーガスクロマトグラフODSA-P2(エフアイエス株式会社製)を用いて計測

当社およびキリンビバレッジ社の「紅茶と暮らし研究所」では、今後も紅茶の基礎研究を継続し、紅茶の魅力を伝えるとともにキリングループの商品への応用研究を行っていきます。

キリングループは、あたらしい飲料文化をお客様と共に創り、人と社会に、もっと元気と潤いをひろげていきます。

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