[食領域]
ホップ由来ビール苦味成分の短期的な摂取が低下した認知機能を改善する機序を世界で初めて解明
- 研究・技術
2017年11月24日
キリン株式会社
キリン株式会社(社長 磯崎功典)の健康技術研究所(所長 近藤恵二)は、東京大学、学習院大学と共同で、ホップ由来のビール苦味成分であるイソα酸※1がアルツハイマー病発症時の海馬の活動を改善することで、低下した認知機能を改善することを世界で初めて解明しました。当社はこの研究成果を11月24日(金)から26日(日)に開催される「第36回日本認知症学会学術集会」にて発表します。
- ※1 ビールの醸造過程でホップから生成される。ホップはビールの原料として1,000年以上にわたり使用され、薬用植物としても知られる。
高齢者の増加に伴い、認知症および認知機能の低下は、日本のみならず世界的に大きな社会課題となっています。特に高齢化の進む日本国内では、2025年には認知症患者が700万人を超えると推定されています※2。一方、アルツハイマー病に代表される認知症には十分な治療方法が開発されておらず、食事や運動といった日々の生活を通じた予防手段が注目されてきました。疫学などの研究では、適度な量の酒類の摂取は認知症の防御因子となることが報告されており、当社でも、これまで東京大学と共同でビールの苦味成分であるイソα酸のアルツハイマー病予防効果に関する研究に取り組んできました。
- ※2 出典:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン) - 厚生労働省

今回、東京大学、学習院大学と共同で、アルツハイマー病を発症し認知機能が低下した状態のマウスに7日間イソα酸を投与することで、脳の中でも特に記憶に重要な領域である海馬の活動異常が改善することをMRI測定により見出しました。また、イソα酸の摂取は海馬における炎症を抑制し、認知機能を改善すること、短期的な摂取においてもアルツハイマー病に伴う認知機能低下を改善することを確認しました。
研究概要
方法
- 認知機能が低下したアルツハイマー病モデルマウスにイソα酸を7日間経口投与しました。
- マンガンMRI測定を行い、新規空間探索時の脳内の神経活動を評価しました。(図1)
- アルツハイマー病の原因物質とされるβアミロイドの量、海馬におけるサイトカインなどの炎症物質を測定しました。(図2)
- 行動薬理学的に認知機能を評価しました。
結果
- 健常群と比較してアルツハイマー病発症群では海馬の活動異常がMRIで確認され、イソα酸投与群ではその活動異常が改善されました。特に海馬CA1領域において確認されました。(図1)
- 可溶性のβアミロイドの量が低下し、海馬における脳内の炎症が緩和されました。(図2)
- 行動薬理評価の結果、認知機能が有意に改善しました。
- 以上の結果により、イソα酸は短期的な投与で脳内炎症を抑制し、海馬の活動を改善することで認知機能を改善することが示唆されました。
(図1)

(図2)

キリングループは、あたらしい飲料文化をお客様と共に創り、人と社会に、もっと元気と潤いをひろげていきます。
発表の概要
- 1.発表演題名
- ビール苦味成分イソα酸の短期間投与によるアルツハイマー病の病態改善効果
- 2.学会名
- 第36回日本認知症学会学術集会
- 3.発表日
- 2017年11月24日(金)‐26日(日)
- 4.発表場所
- 石川県立音楽堂・ANAクラウンプラザホテル金沢(石川県金沢市)
- 5.発表者
- キリン株式会社、東京大学、学習院大学