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[食領域]

世界初!乳由来βラクトリンが記憶力を改善することをヒト試験で確認

-中高年を対象としたランダム化比較試験を実施-

  • 研究・技術

2019年4月25日

キリンホールディングス株式会社

当社は、これまでキリン独自素材の乳由来成分「βラクトリン」について研究を進めてきましたが、研究を進める過程で「βラクトリン」である「GTWYペプチド」以外のWY配列を有する認知機能改善ペプチドを確認しました。今後の可能性も含めて、これらの総称を「βラクトペプチド」とすることし、2020年12月以降の研究成果に関する発表については、「βラクトリン」のことを「βラクトペプチドの1つであるGTWYペプチド」と表記します。

2020年12月24日(木)

キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典、以下キリンHD)の健康技術研究所(所長 小川俊也)は、慶應義塾大学と共同で、乳由来の認知機能改善ペプチドであるβラクトリン※1が健常中高年を対象としたランダム化比較試験で記憶力を改善することを世界で初めて確認しました。この研究成果は科学誌「Frontiers in Neuroscience」※2に掲載されました。

  • ※1 βラクトグロブリン由来のβラクトペプチドであるアミノ酸4残基のペプチド(グリシン-スレオニン-トリプトファン-チロシン, GTWY)を指す。
  • ※2 論文タイトル:Supplementation with whey peptide rich in β-lactolin improves cognitive performance inhealthy older adults: a randomized, double-blind, placebo-controlled study
    著者:Kita M, Kobayashi K, Obara K, Koikeda T, Umeda S, Ano Y
    雑誌名:Frontiers in Neuroscience
    DOI番号:10.3389/fnins.2019.00399

高齢化が進む国内において、認知症や認知機能低下は大きな社会課題となっています。認知症発症後の有効な治療方法が十分でないことから、日常生活における予防に注目が集まっています。近年の疫学調査によると、乳製品の摂取には認知症予防効果があるとされ、キリンHDは2015年に東京大学と共同で、カマンベールチーズのアルツハイマー病予防効果を解明しました。さらに、東京大学、神戸大学、学習院大学との共同研究を進め、2018年には発酵乳製品に多く含まれる認知機能改善ペプチドとしてβラクトリンを発見し、乳由来βラクトリンを多く含む食品素材を独自に開発しました※3。

  • ※3 論文タイトル:Novel lactopeptides in fermented dairy products improve memory function and cognitive decline.
    著者:Ano Y, Ayabe T, Kutsukake T, Ohya R, Takaichi Y, Uchida S, Yamada K, Uchida K, Takashima A,Nakayama H
    雑誌名:Neurobiology of Aging
    DOI番号: 10.1016/j.neurobiolaging.2018.07.016.

今回、キリンHDは慶應義塾大学と共同で、健常中高年を対象にランダム化比較試験を実施し、乳由来βラクトリンを多く含むサプリメントについて、認知機能への作用を評価しました。その結果、βラクトリン摂取群ではプラセボ摂取群と比較して記憶機能が有意に改善することが確認されました。乳由来βラクトリンが記憶力を改善することをヒト試験で確認したのは世界で初めてです。本成果をもとに、βラクトリンを多く含む食品や飲料が開発され、食を通じて認知症予防や認知機能改善に貢献することが期待されます。

試験方法

試験は、50歳から75歳の健常中高年114名を、βラクトリンを含むサプリメントを摂取する群(βラクトリン摂取群)およびプラセボ摂取群に無作為に割り付け、12週間摂取させる2重盲検化試験を行いました。摂取0週目および12週目に被験者の認知機能について、神経心理テストを用いて評価を行いました。

試験結果

βラクトリン摂取群では、摂取12週目のウェクスラー成人知能検査※4の手がかり再生記憶※5を評価する視覚性対連合試験の結果が、プラセボ摂取群と比較して有意に改善しました。(図1)

図1 視覚性対連合記憶試験の結果

その他、標準言語性対連合学習検査※6等の記憶検査でもβラクトリン摂取群はプラセボ摂取群よりも高い改善作用を示しました。これらを踏まえ、βラクトリンの記憶力(特に想起機能)改善には前頭葉の背外側前頭前野※7の関わりが示唆されました。今後、更なる検証を進めていきます。

  • ※4 16歳以上の成人用に標準化された、知能検査。知能(IQ)を測るための一般的な検査である。
  • ※5 何かの手がかりを利用して再生する記憶機能である。75歳以上の運転免許更新前に義務化された認知機能検査の検査項目の1つである。
  • ※6 日本高次脳機能障害学会が作成した、言語性の記憶機能を評価するための検査方法である。
  • ※7 脳の前頭前野の上部。作動記憶(ワーキングメモリ)、注意集中、注意制御、抑制といった機能に重要な脳領域である。

キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。

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