[ヘルスサイエンス領域]

~キリンホールディングスとファンケルの共同研究成果~

「熟成ホップエキス」の化粧品原料開発と、新たな機能を発見

  • 研究・技術

2021年8月20日

キリンホールディングス株式会社
株式会社ファンケル

キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典、以下キリン)は、株式会社ファンケル(社長 島田和幸、以下ファンケル)との間で、2019年の資本業務提携を契機にさまざまな共同開発を進めています。

キリンとファンケルは、キリンが独自に開発した「熟成ホップエキス」について、化粧品の原料化と新たな機能に関する共同研究を行ってきました(以下、熟成ホップエキスを用いた化粧品の原料を「熟成ホップエキス含有化粧品原料」と表記)。このたび、「熟成ホップエキス」の化粧品原料化に成功し、新たな機能として「毛穴の状態改善効果」があることを発見しました。
なお、「熟成ホップエキス」に関する化粧品原料開発と新機能に係る両技術について、キリンとファンケルは共同で特許を出願中です。

研究方法・結果

毛穴悩みの一つとして、「角栓のつまり」が挙げられます。
角栓は、古い角質と皮脂が混ざりあったもので、角栓が毛穴に詰まったままでは、炎症などの肌トラブルが起こりやすい状態になっています。そこで、角質と皮脂のそれぞれに対する「熟成ホップエキス含有化粧品原料」の作用について調べました。
その結果、精製水に比べて、開発した「熟成ホップエキス含有化粧品原料」は角質の主な成分であるケラチンが約3倍膨潤することを確認しました。このことから、角質が柔らかくなり角栓が除かれやすくなることが期待されます(図1)。

  • 図1 ケラチン膨潤度(%)

次に、「熟成ホップエキス含有化粧品原料」の皮脂の酸化防止効果を確認するために、皮脂の構成成分の一つであるリノール酸に添加し、過酸化脂質の生成度を測定しました。何も添加しない場合(コントロール/control)との過酸化脂質生成度を比較した結果、「熟成ホップエキス含有化粧品原料」はリノール酸の過酸化脂質度を約1/14に抑制しました。これは一般的な脂質の酸化防止剤であるBHT※1やBHA、α-トコフェロールなどと比較しても同等の酸化防止効果があると考えられます(図2)。
※1 ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)の略であり、一般的なパーソナルケア製品や食品を安定に保存するために使用される酸化防止剤

  • 図2 過酸化脂質生成度(%)(9日目)

以上のことより、開発した「熟成ホップエキス含有化粧品原料」は、角栓のできる要因である角質と皮脂の両方にアプローチすることが分かりました。この原料を化粧品に添加することで、毛穴の状態を健やかに保つことが期待されます。

研究背景・目的

キリンは、ヨーロッパで古くから薬用ハーブとして生活の中で親しまれている「ホップ」の健康機能に着目した研究開発を、2000年初頭から続けており、独自の新素材「熟成ホップエキス」を開発しました。キリンはこれまでの研究で、「熟成ホップエキス」が体脂肪抑制効果※2や認知機能改善効果※3を持つことを確認し、キリンビール株式会社(社長 布施孝之)、INHOP株式会社(社長 金子裕司)などのグループ会社において、同素材の食品への応用を進めてきました。

このたび、ファンケルとキリンの共同研究の中で、「熟成ホップエキス」の化粧品への応用に向けて、これまでに確認されていない新たな美容機能についての発見と同素材の化粧品原料化への取り組みを進めました。
※2 Nutr J. 2016 Mar 9;15:25.
※3 J Agric Food Chem. 2020 Jan 8;68(1):206-212.

今後の展望

今後も、両社で「熟成ホップエキス含有化粧品原料」の機能研究をさらに進めていきます。また、毛穴に対する機能性を応用し、化粧品洗浄剤やスキンケア製品など幅広い製品へ生かす検討を行うとともに、「熟成ホップエキス含有化粧品原料」をファンケルの2021年の主力化粧品のリニューアルにも採用する予定です。

キリングループは、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV※4先進企業となる」ことを目指しています。その実現に向けて、既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループが長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」技術をベースにして、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」(ヘルスサイエンス事業)の立ち上げ、育成を進めています。
※4 Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造

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