消費者志向自主宣言・フォローアップ

理念

  1. 食と健康の領域で、情熱をもって真摯にお客様に寄りそい、一緒になって幸せな未来をめざします。そして、技術に立脚した品質本位のものづくりを通じて、人々の健康で心豊かな生活に貢献します。
  2. 安全で安心いただける商品・サービスを提供し、お客様の声を大切にして満足度の向上を図り、信頼される企業をめざします。
  3. 社会と共有できる価値の創造(CSV)という経営方針のもと、「酒類メーカーとしての責任」を前提に、「健康」「コミュニティ」「環境」という社会課題の解決に主体的に取り組むことで、お客様の幸せに貢献します。
  • CSV=Creating Shared Value

取組方針

1.常にお客様の立場に立って考えるという企業風土の醸成

  1. お客様本位、お客様満足が第一であるという経営トップの考え方を、従業員との直接対話等を通じて社内への浸透を図ります。
  2. お客様が価値を認めご満足いただける商品・サービスを提供できるための社内研修を実施します。

2022年 主な取り組み・成果

(1)「お客様本位」の浸透と実践に向けて

創業以来の姿勢である「お客様本位」の考え方、お客様や社会の課題を解決していくことの重要性を“トップメッセージ”として、キリングループ全体へ社内報、動画、社内イントラネット等を通じて発信し、従業員が自ら考える機会を創出しています。また、経営陣によるグループ各社全国事業所の従業員との対話を32回実施し、浸透を図りました。

(2)社内研修の実施
  1. お客様からのお申出に対応する営業担当者向けに、応対品質の向上を目的とした研修を、オンラインにて開催しました。
  2. お客様相談室員の人財育成を目的として、本年度もお客様対応専門員資格(一般財団法人日本産業協会主催)の取得を推進してきました。消費者関連の知識を学び、お客様との直接の接点で、お客様に寄り添い、真意を汲み取ることで、適切な対応を可能にするための知識を習得しています。また、お客様相談室員の窓口応対品質の向上を図るためのCX(カスタマーエクスペリエンス)研修を通年で実施しました。

2.お客様の安心につながる情報の適切な開示

  1. 適正飲酒の啓発活動を継続的に行っていきます。
  2. 商品・サービスにかかわる品質情報のコミュニケーションを充実させることで、安心感や信頼感の向上につなげていきます。

2022年 主な取り組み・成果

(1)適正飲酒啓発への取り組み
  1. 毎月SNSを通じて適正飲酒に関する情報を発信することで、お客様から共感コメントをいただき、また自発的アクション(発話・拡散)も生まれました。
  2. お客様が摂取するアルコール量を自身で把握し、コントロールしやすくなるよう支援するため、商品ラベルに純アルコール量の表示を開始しました。また、ノンアルコール・低アルコール商品の開発を推進し、お客様の目的に応じた選択肢を広げています。
  3. 飲酒運転根絶に向けて、注意喚起のメッセージを全国交通安全週間にあわせて発信しました。
(2)Webサイトでの開示情報の拡充
  1. 「商品・サービス情報サイト(www.kirin.co.jp)」での開示
    「商品・サービス情報サイト」において、商品の原材料やアレルゲン、栄養成分等の情報を提供しています。2022年には、情報提供を行う健康食品の対象商品を広げるとともに、外装からはわかりにくい商品の形状や摂取の方法、注意事項等の情報も掲載しました。また、健康食品のページデザインをリニューアルし、商品・品質情報やオンラインサイトへアクセスしやすく改善しました。
  2. 「企業情報サイト(www.kirinholdings.com)」での開示
    「品質への取り組み」コンテンツに、ヘルスサイエンス領域における安全・安心の取り組みとして、機能性表示食品の事例を掲載しました。機能性表示食品の安全性・有効性の確認には、高い専門性が必要であり、素材基礎研究から商品開発、さらに上市後まで、各部門が専門性を発揮しながら、どのように安全性・有効性を確認しているかをプロセスごとに紹介しています。

3.お客様の声を活かす仕組みづくり

お客様からいただいた貴重な声を全従業員に共有し、より良い商品・サービスの提供に活かしていきます。

2022年 主な取り組み・成果

(1)お客様の声への対応と共有

お客様相談室では、ご連絡を受けた時点で、その内容を情報管理システムに入力し、社内の各関連部門と連携しながら、迅速かつ丁寧に対応しています。2022年は、電話、メール、お手紙で年間約43,000件のお問い合わせやご意見、ご指摘※をいただきました。また、新たな接点として、有人によるチャット対応を始めました(当面は曜日限定で運用しています)。

寄せられたお声は、翌日までに「日報」として社内共有する他、「月報」、「四半期報」、「トピックス」等のレポートを発信するとともに、お客様相談室の社内ポータルサイトで常時掲載し、全従業員に共有する取組みを継続しています。
また、何かお困りごとや知りたいことがあったときに、お客様相談室に電話やメールをされることなくお客様ご自身で解決していただけるようお客様相談室ホームページの「よくあるご質問」QAを適宜更新している他、AIチャットボットの回答により到達しやすくなるよう整備を進めてきました。

  • ご指摘=商品やサービスに対するお客様のご不満が形となって現れたもののこと。
(2)お客様の声を改善につなぐ仕組み

お客様から寄せられたご意見やご要望を取り入れ、商品やサービスの開発、改善、充実を図るために、お客様相談室と研究開発、製造、販売、企画などの関連部門が集まる“改善ミーティング”を毎月実施し、改善につなげました。改善につながった代表的な事例はホームページでご紹介しています。

4.社会課題の解決に資する商品・サービスの開発・提供(CSVの推進)

  1. お客様の健康増進につながる商品・サービス・事業を創造します。
  2. 事業活動を通じた地域活性化や、サプライチェーンの持続可能性強化により、地域社会へ貢献します。
  3. 事業活動における環境負荷軽減の取り組みを進めていきます。

2022年 主な取り組み・成果

(1)お客様の健康増進につながる商品、サービス、事業の創造

キリンホールディングスの独自素材「L. lactis strain Plasma (以下、プラズマ乳酸菌)」を使用した商品について、機能性表示食品制度の「健康な人の免疫機能の維持をサポート」に関する表示を持つ商品を、さまざまなライフスタイル・好みに合わせて、免疫機能表示を持つ商品を購入・摂取できる環境の実現をパートナー企業と一緒に目指しています。
2022年度の代表的な新商品として、キリンビバレッジ社からプラズマ乳酸菌を配合した100 mlペットボトル飲料の機能性表示食品「キリン iMUSE(イミューズ) 朝の免疫ケア」を3月、小岩井乳業社からはプラズマ乳酸菌含有のiMUSEヨーグルト低脂肪 400 mlという大容量タイプの商品を9月に発売しました。また、キリンホールディングスからはサプリメントで免疫ケア+健康習慣シリーズとして「キリン iMUSE 免疫ケア・良眠プラス」や「キリン iMUSE 免疫ケア・内臓脂肪ダウン」が10-11月に発売されました。さらには、「プラズマ乳酸菌」を使用した国内外のパートナー企業とのコラボレーション商品も着実に増加しています。例えば日本ではコカ・コーラ社を含め、外部パートナー企業8社から、免疫機能の機能性表示食品17商品を販売中で今後も増えていく予定です。また、ペティオ社からは、ペット用の商品が約40商品発売されています。海外では22年にEUでのサプリメント4商品の発売が実現しました。ハラル対応も進めることで海外展開を拡げていきます。
当社と業務資本提携関係にあるファンケル社と互いの強みを生かして共同開発した「キリン 午後の紅茶 アップルティープラス」を22年3月に発売しました。おいしい紅茶だからできる、心の安らぎと日常のポジティブな“健康習慣”に向けて、「おいしく腸内ケアし、心も体もすっきり前向きにさせてくれるアップルティー」をコンセプトとして提案しています。
上記に加え、新たなサービスや事業創造に積極的にチャレンジしています。例えば、アミノ酸を中心にカスタマイズされた粉末サプリメントを提供するサーバーを開発し、筋力トレーニング前後に摂取できるよう、一部スポーツジムへの設置を行ってきました。これからもお客様の健康増進に貢献していきたいと考えています。

(2)事業活動を通じた地域活性化、サプライチェーンの持続可能性強化による地域社会への貢献
  1. 日本産ホップへの取り組み
    年々減少する“ビールの魂”と言われる原材料「ホップ」の国内における生産を継続するため、行政、生産者、地域の皆様と共に官民連携でホップの持続可能な生産体制の維持や生産地の活性化に向けた取り組みを継続支援しています。また、技術開発や育種開発にも取り組んでおり、日本産ホップ「IBUKI」は、自社商品に採用するほか、全国のクラフトブルワリーにも販売し、ホップの認知を向上するとともに、安定供給と品質改善に取り組んでいます。
    さらに、クラフトビール専用の小型ディスペンサー「タップ・マルシェ」を通じ国内外のブルワリーとの連携を進め、地名を冠したブランドを全国に広めたり、原料に地元の素材を使ったりすることで地産品のアピールに繋げるなどシティセールスにも貢献しています。また、クラフトビールならではの多様なビアスタイルと味わいを語り合うコミュニケーションを醸成し、ビールを通じて人と人のつながりを増やしています。
  2. 日本ワインへの取り組み
    2019年に開業した「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」は、ワイン観光に取り組む世界最高のワイナリーを選ぶ「ワールド・ベスト・ヴィンヤード」をアジア初の3年連続で受賞。
    また椀子ヴィンヤードは、2030年までに陸と海で30%を健全な生態系として効果的に保全することを目指す国際目標「30by30」の自然共生サイト実証事業に参加しています。
    シャトー・メルシャンは、「日本を世界の銘醸地に」というビジョンのもとで、日本ワインの黎明期から続く新しい栽培方法の導入や醸造技術へのチャレンジに加え、日本ワイン全体の発展のため、新技術の公開をはじめ、ワイン産業を支える人材育成や遊休地活用、雇用の創出、草原・絶滅危惧種再生などに取り組み、地域、自然、未来との共生を目指しています。
  3. 持続可能な調達方針
    キリングループは、5つの取り組みテーマ(品質本位、コンプライアンス順守、人権尊重、環境保全、サプライヤーとの共存・共栄)に従って調達活動を行い、世界的視野での持続可能性を高めると共に、企業価値を向上させ、社会への貢献を図っていきます。そのため、「キリングループ持続可能な調達方針」「キリングループ持続可能なサプライヤー規範」を定めキリングループ調達方針の実現に取り組んでいます。
    2022年にはサプライチェーンにおける「労働条件を管理・改善する」ためのオンラインプラットフォームを提供する「Sedex」に加入するとともに原料や資材の調達活動における人権デューデリジェンスを推進するべく、食品・飲料業界10社で発足する「食品&飲料業界のバイヤー会員Sedexワーキングチーム」にも参画しました。
(3)事業活動における環境負荷軽減の取り組み

キリングループは、環境に対する世界の動向が大きく変わって来たことを受けて、2013年に策定した「キリングループ 長期環境ビジョン」を見直し、社会と企業のレジリエンス強化へ向けた新たな長期戦略として「キリングループ環境ビジョン2050」を、2020年2月に発表しました。わたしたちはこの新しいビジョンの下、これからの世代を担う若者をはじめとする社会とともに、こころ豊かな地球を次世代につなげていきたいと考えています。

  1. 「キリングループ環境ビジョン2050」では「気候変動」「生物資源」「水資源」「容器包装」の4つの柱を重要なテーマとして掲げています。
    「気候変動」では、SBTイニシアチブの「1.5℃目標」に加えて「SBTネットゼロ」の認定を取得し、国際的な環境イニアシアチブ「RE100」に加盟して2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%を宣言。洋上風力発電などの新たな再生可能エネルギー電源開発に積極的に関わり、世の中の再生可能エネルギー供給量を増やすことに貢献していきます。
  2. 気候変動の影響を大きく受ける「生物資源」では、スリランカの紅茶農園に対する持続可能な認証システムの取得支援を2013年から開始し、2021年には認証農園の茶葉を使った製品の通年販売を開始しています。国内では椀子ヴィンヤードなどで、遊休荒廃地を日本ワインのためのブドウ畑にすることが良質で広大な草原環境を創出し、多様な生態系の保全に貢献することを農研機構との共同研究で明らかにしています。製品面では、フードウェイスト削減に向けて、製造時期・賞味期限表示の大括り化を実施しています。
  3. 「水資源」では、国内の工場水源地保全活動に加えて、スリランカの紅茶農園内の水源地保全活動を行っています。
  4. 「容器包装」では、国内の飲料グループ会社の紙製容器包装にFSC®認証紙を100%採用。ペットボトルでは2027年にリサイクル樹脂の使用割合を50%まで高め、2050年までにリサイクル材やバイオマスなどを使用した持続可能な容器包装100%化を目指しています。

キリングループは、複合的に発生し相互に関連する環境問題に対して、上記4つの課題(気候変動・生物資源・水資源・容器包装)を、個別の課題ではなく相互に関連する課題であると捉え、統合的に解決していきます。

以上

2023年3月27日
キリンホールディングス株式会社 代表取締役社長

磯崎 功典