消費者志向自主宣言・フォローアップ

理念

  1. 食と健康の領域で、情熱をもって真摯にお客様に寄りそい、一緒になって幸せな未来をめざします。そして、技術に立脚した品質本位のものづくりを通じて、人々の健康で心豊かな生活に貢献します。
  2. 安全で安心いただける商品・サービスを提供し、お客様の声を大切にして満足度の向上を図り、信頼される企業をめざします。
  3. 社会と共有できる価値の創造(CSV)という経営方針のもと、「酒類メーカーとしての責任」を前提に、「健康」「コミュニティ」「環境」という社会課題の解決に主体的に取り組むことで、お客様の幸せに貢献します。
  • CSV=Creating Shared Value

取組方針

1.常にお客様の立場に立って考えるという企業風土の醸成

  1. お客様本位、お客様満足が第一であるという経営トップの考え方を、従業員との直接対話等を通じて社内への浸透を図ります。
  2. お客様が価値を認めご満足いただける商品・サービスを提供できるための社内研修を実施します。

2023年 主な取り組み・成果

(1)「お客様本位」の浸透と実践に向けて
  1. 創業以来の姿勢である「お客様本位」の考え方、お客様や社会の課題を解決していくことの重要性を“トップメッセージ”として、キリングループ全体へ社内報、動画、社内イントラネット等を通じて発信し、従業員が自ら考える機会を創出しています。また、経営陣によるグループ各社全国事業所の従業員との対話を実施し、浸透を図りました。
  2. キリングループが製造・販売する商品及びキリンブランドで販売する商品について、商品への表示を「お客様や社会とのコミュニケーションの1つ」として位置づけ、 表示を行う際のお約束を「商品表示に関する指針」として、新たに定めました。
(2)社内研修の実施
  1. お客様からのお申出に対応する営業担当者向けに、応対品質(特に共感力)の向上を目的とした研修を開催しました。また、新入社員向けに、お客様対応に必要な基本コニュニケーション習得のための研修を毎年開催しています。
  2. お客様相談室員の人財育成を目的として、本年度もお客様対応専門員資格(一般財団法人日本産業協会主催)の取得を推進してきました。消費者関連の知識を学び、お客様との直接の接点で、お客様に寄り添い、真意を汲み取ることで、適切な対応を可能にするための知識を習得しています。また、お客様相談室員の窓口応対品質の向上を図るためのCX(カスタマーエクスペリエンス)研修を通年で実施しました。

2.お客様の安心につながる情報の適切な開示

  1. 適正飲酒の啓発活動を継続的に行っていきます。
  2. 商品・サービスにかかわる品質情報のコミュニケーションを充実させることで、安心感や信頼感の向上につなげていきます。

2023年 主な取り組み・成果

(1)適正飲酒啓発への取り組み
  1. キリングループ経営陣は、アルコール依存症の専門治療病院である国立病院機構久里浜医療センターを訪問し、アルコール関連問題の最新の研究と課題について受講しました。
    アルコール飲料を製造・販売する企業の社会的責任として、経営陣が自ら学び、アルコールを取り巻く状況を再認識しました。
  2. キリンビバレッジ社が展開する健康経営を支援する法人向けサービス「KIRIN Naturals」のコンテンツを拡充し、「適正飲酒プログラム(※)」を新たに展開しました。
    (※)管理栄養士のアドバイスを通じた適正飲酒習慣の支援や、「キリン グリーンズフリー」を中心としたキリンのノンアルコール飲料との置き換え習慣の推進など、飲酒量のコントロールを支援するプログラム。
  3. キリンビール社は、適正飲酒啓発の一環として、飲酒運転根絶に向けてノンアルコール飲料の「キリン グリーンズフリー」と連動した広告を制作しました。
    「アルコールの有害摂取の根絶」に向けた取り組みを発展させていきます。
(2)Webサイトでの開示情報の拡充
  1. 「商品情報サイト(www.kirin.co.jp)」での開示
    「商品・品質情報」において、商品の原材料やアレルゲン、栄養成分等の情報を提供しています。また、アレルゲンの表示対象品目の変更などの法令改正に合わせ、適切な情報の内容としています。
    2023年には新コンテンツ「未来につながるキリンのアクション」を公開し、「酒類メーカーとしての責任」「健康」「コミュニティ」「環境」「安全・安心の取り組み」の5つのテーマについて、「キリンのアクション」をご紹介しています。例えば、「安全・安心の取り組み」では、工場での様々な異物混入対策についてわかりやすく説明しています。
  2. 「企業情報サイト(www.kirinholdings.com)」での開示
    「品質への取り組み」に、原材料の安全性に関する内容を追加しました。この中でキリングループとしての原材料(原料、容器等)の安全性保証に関するガイドラインを定め、国内の食事業において使用する原材料の安全性を確保していることや、遺伝子組換え、残留農薬等に関する対応状況をご紹介しています。

3.お客様の声を活かす仕組みづくり

お客様からいただいた貴重な声を全従業員に共有し、より良い商品・サービスの提供に活かしていきます。

2023年 主な取り組み・成果

(1)お客様の声への対応と共有

お客様相談室では、ご連絡を受けた時点で、その内容を情報管理システムに入力し、社内の各関連部門と連携しながら、迅速かつ丁寧に対応しています。2023年は、電話、メール、お手紙で年間約42,000件のお問い合わせやご意見、ご指摘※をいただきました。
寄せられたお声は、翌日までに「日報」として社内共有する他、「月報」、「四半期報」、「トピックス」等のレポートを発信するとともに、お客様相談室の社内ポータルサイトで常時掲載し、全従業員に共有する取組みを継続しています。また、共有するお声の範囲をヘルスサイエンス事業にも拡げ、各部門を横断して定期発信しています。
また、何かお困りごとや知りたいことがあったときに、お客様相談室に電話やメールをされることなくお客様ご自身で解決していただけるようお客様相談室ホームページの「よくあるご質問」QAを適宜更新している他、AIチャットボットの回答により到達しやすくなるよう整備を進めてきました。

  • ご指摘=商品やサービスに対するお客様のご不満が形となって現れたもののこと。
(2)お客様の声を改善につなぐ仕組み
  1. お客様から寄せられたご意見やご要望を取り入れ、商品やサービスの開発、改善、充実を図るために、お客様相談室と研究開発、製造、販売、企画などの関連部門が集まる“改善ミーティング”を毎月実施し、改善につなげました。改善につながった代表的な事例はホームページでご紹介しています。
  2. また、お客様対応後に実施したアンケート結果をもとに、対応上の不備はないか常に振り返り、改善を図っています。

4.社会課題の解決に資する商品・サービスの開発・提供(CSVの推進)

  1. お客様の健康増進につながる商品・サービス・事業を創造します。
  2. 事業活動を通じた地域活性化や、サプライチェーンの持続可能性強化により、地域社会へ貢献します。
  3. 事業活動における環境負荷軽減の取り組みを進めていきます。

2023年 主な取り組み・成果

(1)お客様の健康増進につながる商品、サービス、事業の創造

キリンホールディングスは、独自素材「L. lactis strain Plasma (以下、プラズマ乳酸菌)」を活用し、機能性表示食品制度の「健康な人の免疫機能の維持をサポート」に関する表示を持つ商品を、多様なお客様のライフスタイル・好みに合わせ、手軽に摂取できる幅広いラインアップで展開することで、“免疫ケア”習慣の定着を促進しています。
2023年度の代表的な新商品として、キリンビバレッジ社からは、プラズマ乳酸菌を配合した100 mlペットボトル飲料の機能性表示食品「キリン おいしい免疫ケア」「キリン おいしい免疫ケア カロリーオフ」「キリン おいしい免疫ケア 睡眠」、小岩井乳業社からは「小岩井 iMUSE(イミューズ)ヨーグルト砂糖不使用」、キリンホールディングスからは、サプリメント「キリン iMUSE(イミューズ)免疫ケア・ヘルシア内臓脂肪ダウン」を発売しました。
また、パートナー企業を通じて販売するプラズマ乳酸菌配合の機能性表示食品は国内では12社23商品(2023年12月末時点)に拡大し、海外における販売国も11ヶ国まで拡大しています。今後はハラル対応のプラズマ乳酸菌を販売し、アジア地域への浸透も目指していきます。
上記に加え、新たなサービスや事業創造に積極的にチャレンジしており、例えば、減塩に関する悩みを抱えるお客様が、おいしく生活習慣の改善ができるよう、電流波形を用いた技術を搭載したスプーン型の「エレキソルト」デバイスを開発し、2024年内の日本国内での発売を目指しています。このような取り組みを通じて、これからもお客様の健康増進に貢献していきたいと考えています。

(2)事業活動を通じた地域活性化、サプライチェーンの持続可能性強化による地域社会への貢献
  • キリングループは、「食に関わる経済の活性化」、「ウェルビーイングを育むつながりと信頼の創出」「原料生産地と事業展開地域におけるコミュニティの持続的な発展」、「人権の尊重」の領域で、事業活動を通じた地域活性化や、持続可能な地域社会への貢献を目指しています。
  1. 持続可能な調達方針
    キリングループは、5つのテーマ(品質本位、コンプライアンス順守、人権尊重、環境保全、サプライヤーとの共存・共栄)に従って世界的視野で持続的に調達するために、「キリングループ持続可能な調達方針」「キリングループ持続可能なサプライヤー規範」を定めています。
    2023年3月には「国内食品製造事業者の持続可能な原材料調達の優良企業」として、「官房長賞」を受賞しました。
    また、キリングループは、人権リスクの高い調達品のサプライチェーンに対する継続的な人権デューデリジェンスを実施しており、調達量の多いスリランカの紅茶農園における人権影響評価実施報告を行いました。改善が必要な項目については、継続的にモニタリングを行い、是正に向けた適切な処置を行っています。
    加えて、同11月には、人権の取り組みをグローバルレベルへ加速させるため、「キリングループ人権方針」を改訂しました。
    特定した人権課題は、ステークホルダーへの適切な情報開示と対話を通じて継続的に活動を進化させていきます。
  2. 紅茶商品を通した国内復興応援プロジェクト
    キリン午後の紅茶は、2021年より「午後ティーHAPPINESSプロジェクト」を開始し、復興に向けて前へ進む方々の想いと、全国のお客様の応援の気持ちを、キリン午後の紅茶の商品を通してつないでいます。
    第一弾として、熊本県産いちごを使用した商品の売り上げの一部を寄付するとともに、ブランドの活動を通して、熊本県の食産業や教育、鉄道インフラなど様々な場面で支援を行い、熊本の地域活性化に取り組んでいます。
  3. 官民連携で取り組むワイン産業振興
    「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」が所在する長野県上田市と包括連携協定を結び、ワイン産業を軸とした地域活性化や魅力的で持続可能な地域としての発展を推進しています。具体的には、ブドウ栽培者やワイン生産者、地元の販売店や飲食店などとともに、ワイン産業振興を通じた食文化の醸成や、ワイン産業に関わる人材育成にも取り組み、上田市の観光人口増加へ貢献することも目指しています
(3)事業活動における環境負荷軽減の取り組み
  • キリングループは、2020年2月に「キリングループ環境ビジョン2050」を発表し、「気候変動」「生物資源」「水資源」「容器包装」の4つを重要なテーマとして掲げ、複合的に発生し相互に関連する環境問題に対し、これらを個別の課題としてではなく、相互に関連する課題ととらえ、統合的に解決することを目指しています。
  1. 「気候変動」では、SBTイニシアチブの「1.5℃目標」に加えて「SBTネットゼロ」の認定を取得し、国際的な環境イニアシアチブ「RE100」に加盟して2040年までに再生可能エネルギー使用比率100%を宣言しました。そして、2024年1月からキリンビールの全工場・全営業拠点の購入電力を再生可能エネルギー100%に切り替えました。医薬事業を展開する協和キリン社の工場や研究所、酒類事業を展開するライオン社のオーストラリアとニュージーランドの全事業所等、キリングループ全体での購入電力の再生可能エネルギーへの切り替えを着実に実施しています。今後も、洋上風力発電などの新たな再生可能エネルギー電源開発に積極的に関わり、世の中の再生可能エネルギー供給量を増やすことに貢献する追加性と倫理性を重視した取り組みを進めていきます。
  2. 気候変動の影響を大きく受ける「生物資源」では、スリランカの紅茶栽培地域全体の持続性を高めるために、土壌の健全性や生態系の回復、農園の収益拡大にも貢献する環境再生型農業を実践するための新たな活動(スコアカード)を2023年から開始しました。また、シャトー・メルシャン椀子ヴィンヤードが、生物多様性の新しい世界目標である30by30(※)に寄与するための国内制度である自然共生サイトに認定されました。商品面では、フードウェイスト削減に向けて、製造時期・賞味期限表示の大括り化を実施しています。
    ※ 世界全体で陸地と海のそれぞれ30%以上を保全地域にする「30by30」は、2022年12月に開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において新しい世界目標として採択されました。
  3. 「水資源」では、国内の工場水源地保全活動に加えて、スリランカの紅茶農園内の水源地保全活動を行っています。
  4. 「容器包装」では、国内の飲料グループ会社の紙製容器包装にFSC®認証紙を100%採用。ペットボトルでは2027年に国内リサイクル樹脂の使用割合を50%まで高め、2050年までにリサイクル材やバイオマスなどを使用した持続可能な容器包装100%化を目指しています。2023年には高効率・環境負荷低減を実現するPETケミカルリサイクル技術として、PETを分解する工程を短時間・低エネルギーで実現する「アルカリ分解法」を開発、早稲田大学と共同で、環境負荷軽減とコスト削減を両立した「電気透析」による精製法を開発しました。今後も資源循環型のリサイクルプロセスの実用化に向け、研究開発を進めていきます。

以上

2024年4月1日
キリンホールディングス株式会社 代表取締役社長COO
南方 健志