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2022年-2024年中期経営計画 始動
新たな軌道を描き、KV2027実現に向け飛躍的な成長を遂げる3年に

キリンホールディングス株式会社
代表取締役社長
磯崎 功典

「不確実性の時代」に育んだ“飛躍”の苗木

3年前に2019-2021年中期経営計画(2019年中計)を発表するにあたり、世界は「VUCA(ブーカ)の時代」に突入するとお伝えしました。そしてその言葉が現実になるかのごとく、2020年の幕開けとともに新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが発生。世界は混迷を極めることとなりました。地球温暖化を原因とする感染症リスクは以前から指摘されていたものの、これほどまでの影響を誰が想像できたでしょうか。度重なるウイルスの変異により流行は長期化し、出口の見えない闘いが今なお続いています。

  • VUCA:「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を並べたもの。変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢を示す

世界情勢に目を向けると、自国第一主義が拡大し、2021年2月にはキリングループが事業を展開するミャンマーでクーデターが発生するなど、地政学的リスクも顕在化しています。

こうした社会情勢の影響もあり、残念ながら2019年中計で掲げた数値目標を達成することはできませんでした。しかし、この急激な環境変化は、我々が10年後に想定していた社会が新型コロナウイルス感染症によって前倒して到来しているものと考えています。その中でお客様の行動変容を的確に捉え、計画を前倒しして新たな取り組みを行うなど、未曾有の状況下でも成し遂げられたことや、得られた気付きが多くありました。

例えば、これまで飲食店を中心に展開していた生ビールやクラフトビールについては、自粛生活による家飲み需要をいち早く捉え、「キリン ホームタップ」や「スプリングバレー豊潤<496>」の缶などを家庭用チャネルにて展開するなど、当初の予定を大幅に早めてチャネルのシフトを推進しました。

さらに、2020年9月にはプラズマ乳酸菌が免疫機能で日本初の機能性表示食品として消費者庁に届出受理されました。感染症の拡大による健康意識の高まりも背景に、「iMUSE」ブランドを中心とした多彩な商品を展開し、科学的なエビデンスを強みに大きく販売数量を伸ばすことができました。

非財務の視点において、特にガバナンスに関しては、議長を筆頭に取締役会の過半数を社外取締役が占める体制とし、社外からも高い評価をいただいています。実際に取締役会の議論はより深く、活発なものになっており、私も今まで以上に緊張感をもって臨んでいます。また「キリングループ環境ビジョン2050」に基づく環境への取り組みや、従業員エンゲージメントについても、一定の成果を上げることができました。

しかし、この先も厳しい事業環境に変わりはなく、世界がかつての姿に戻ることはないでしょう。私たちは全く新しい世界を生き抜いていく「覚悟」を持たなければなりません。これまで述べた通り、幸いにもキリングループは次なる成長に向け、着実に種まきを行ってきました。長期経営構想キリングループ・ビジョン2027(KV2027)の基本的な方向性を揺るがすことなく、「世界のCSV先進企業」を目指していきます。

今年始まった2022年-2024年中期経営計画(2022年中計)は、KV2027がスタートした時に描いていた成長曲線とは異なる新たな成長軌道を描いていく3年間となります。財務KPIである平準化EPSの年平均成長率は11%以上と、コロナ禍からの回復に留まらず大きな成長を目指します。私はこの飛躍的な成長を実現するための基盤を、2019年中計において作り上げることができたと考えています。

  • 図:コーポレート

「KV2027の達成」を再び捉える3年間

既存事業のさらなる成長と、新たな価値の創出

2022年中計において、食領域では、既存事業の構造改革と新規ビジネスの探索によって収益モデルを変えていきます。事業展開している市場の多くが成熟市場であり、量的な成長だけではなく、いかに質的な成長を実現できるかが重要です。基幹ブランドのさらなる強化を行いながら、国内外でクラフトビールや、健康価値を訴求した飲料など付加価値が高い商品・サービスを育成することによってトップライン成長と、Mix改善を図ります。さらに、3年間で300億円の収益改善策を実行し、新型コロナウイルス前の利益水準を大きく超える成長を目指します。

医領域では、グローバル戦略3品をより多くの国や地域で上市し、適応拡大に取り組みます。また、次世代のパイプラインの充実を図ることで、協和キリンを日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての地位を揺るぎないものにしていきます。

ヘルスサイエンス領域については、プラズマ乳酸菌を使用した商品をグループ内外で拡大していくとともに、世界中で高まっている健康需要を捉え、「シチコリン」や「ヒトミルクオリゴ糖(HMO)」を、新たな成長の柱に育てていきます。また、ファンケルとの協働についても、お互いの強みを生かすことで、単独ではできない付加価値の高い商品・サービスを相互のチャネルを活用してお客様に届けていきます。一日でも早くヘルスサイエンス事業をグループの柱にできるよう、M&Aも視野に入れながら、あらゆる取り組みを加速していきます。

  • 図:キリングループ・ビジョン2027(KV2027)

社内人財の深耕と育成・外部人財獲得の掛け合わせにより、競争力を強化

「イノベーションを実現する組織能力」については、ICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を担う人財の育成が急務です。いまやDXは、新しい価値の創出に必要不可欠です。質の高いデータ収集とそれらを分析できる人財の確保は、当社グループの大きな課題と言えます。しかし、ただ外部から専門人財を集めたからといってうまくいくものではありません。データサイエンスの技術や知識以前に、事業理解がなければ、深い洞察を導き出すことはできないからです。今後は、データ分析に精通している人財を教育者やリーダーに迎え入れながら、社内から数学や統計学に関心・適性のある人財を見いだし、きめ細やかなリカレント教育によってDX人財の内製化にも力を入れていきます。この不安定な社会環境の中、新しい中計、そしてKV2027を達成するためには、これまでにも増してグループ従業員の組織貢献が不可欠のため、人財投資を強化していきたいと考えています。

CSVを経営の根幹とし、必ずや飛躍的な成長を実現する

2022年中計は非常に高い定量目標を掲げる3年間となります。しかし、先に掲げた課題を一つ一つ着実に捉えることができれば、達成は可能であると考えます。前中計で、厳しい状況下においても成果を創出してきた各事業・部門の力を結集し、グループ全員で取り組んでいきます。

この不確かな環境の中で、企業はその存在意義が問われていると感じています。私が2013年から訴え続けてきたCSVこそが、その答えになります。CSVは、混迷の時代においてなお確かな足取りで進み続けていくキリングループの経営の根幹であり、存在意義です。私たちは発酵・バイオテクノロジーを強みにして、社会課題の解決によって社会的価値と経済的価値を創出する企業です。経済的な成長によって得られたキャッシュをグループのコア事業に再投資することで、さらに2つの価値の総和を増大させるサイクルを作り出し、社会のサステナビリティ向上に貢献しながら成長を続けていきます。

今後も一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

(更新:2022年3月)

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