トップメッセージ

コロナ禍の厳しい環境だからこそCSV経営をより一層深化させ新たな成長ステージを目指す

代表取締役社長
磯崎 功典

環境変化を機会とし、ニューノーマルの時代を見据えた変革を進める

はじめに、このたびの新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになった方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、罹患された皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、日々感染抑制に努力されている政府、自治体の皆様、感染者の診断・治療に日夜尽力されている医療関係の皆様に深く敬意を表します。

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の経済、社会、政治などあらゆる領域に多大な影響を及ぼし、人々の暮らしを一変させました。キリングループにおいても、外出自粛や移動制限、飲食店の営業時間短縮などによって、いわゆる“外飲み”の需要が激減したほか、オフィス内の自動販売機やオフィス街のコンビニエンスストアでの飲料の売上も大幅に減少しました。
当社グループは、食から医にわたる領域で事業を展開する企業として、商品・サービスの供給責任を果たすため、従業員とその家族の健康と安全を第一優先と位置づけ、事業を継続しました。また、この大きな環境変化を成長、変革の機会と捉え、営業・管理部門ではITツールやシェアオフィスなどを活用したリモートワークを推進するとともに、ニューノーマルの時代を見据え、社員のモチベーション向上にも繋げるため、単なる「働き方改革」にとどまらない「働きがい改革」を進めています。

新型コロナウイルス感染症による影響

  • 新型コロナウイルス感染症による影響の図

2020年の振り返りと2021年計画
次期中期経営計画を見据え、事業構造や収益構造の改革を加速

2019年-2021年中期経営計画の2年目となった2020年度の業績は、食領域を中心にコロナ禍の影響を大きく受けました。前期のライオン飲料事業の減損の反動などにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期から増益となったものの、売上収益、事業利益は減少しました。それでも、各事業会社が生産性向上やコストコントロールなどに懸命に取り組んだ結果、キャッシュ・フローへの影響を最小限に抑えることができました。

最終年度となる2021年度は、長期経営構想キリングループ・ビジョン2027(KV2027)の第2ステージとなる次期中期経営計画を見据え、事業構造や収益構造の改革を実行します。環境変化を捉えた変革を確実に実行していくために、既存の事業構造や仕事の進め方に固執することなく、これまでの事業や日々の職務、働き方などについて、「加速する」「変革する」「やめる」「縮小する」という4つの観点で見直すようグループ全員に指示しました。

事業構造の改革の例として、キリンビールでは家庭用の需要が相対的に堅調な中、少し贅沢なビールの楽しみ方としてキリン ホームタップ事業を拡大します。業務用でも、数量面での需要回復には時間を要することを踏まえ、高付加価値なクラフトビールを小容量で複数取り揃える「タップ・マルシェ」の提案などを加速させます。

一方、キリンビバレッジでは、環境変化に対応した変革が必要です。リモートワークが普及・定着する中、自動販売機事業では設置場所の見直しはもちろん、規模や事業構造の見直しも進めます。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に人々の健康意識が大きく高まっている状況を踏まえ、ヘルスサイエンス戦略を飲料で担う会社へリポジショニングします。

オセアニアのライオンも、業務用の需要が落ち込み家庭用にシフトしていることを踏まえ、マーケティングの強化とサプライチェーンの構造改革を進めていきます。

3つの事業領域で成長を実現する
既存事業の成長力強化を基盤として、ヘルスサイエンス領域を将来の柱に育てる

既存事業の食領域と医領域は当社グループの基盤であり、今後も環境変化に的確に対応して着実な成長を目指します。食領域の酒類事業に関しては、世界的にアルコールに関する規制が次第に強化されていく見通しです。また、コロナ禍で需要が業務用から家庭用へとシフトしているほか、糖質オフやプリン体オフといった機能系商品へのニーズも一層高まっています。加えて、アルコールに対して新しい価値を求める消費者も増えています。それに応えるのが、つくりたての生ビールのおいしさを自宅で味わえるキリンホームタップなどのサービスです。当社グループでは、今後もこうした新しい価値ある商品・サービスを時代に先駆けて提供していきます。一方、医領域では国内の医療費抑制政策が続く中、グローバル基盤の強化を図るとともに、次世代グローバル品の開発・上市に注力し、「グローバル・スペシャリティファーマ」としての成長を図ります。

そして、今後大きな成長が見込めるのがヘルスサイエンス領域です。当社グループは、約110年前にビール事業を始め、その中で培った発酵・バイオテクノロジーを活用して約40年前に医薬事業に参入しました。約35年前から研究してきた免疫分野では、免疫の司令塔を直接活性化するプラズマ乳酸菌を発見し、2020年8月には「健康な人の免疫機能の維持をサポート」する機能性表示食品として、日本で初めて消費者庁への届出が受理されました。

コロナ禍で健康に対する人々の関心が大きく高まる中で、医療崩壊への懸念もあり病気を未然に防ぐことの重要性が改めて認識されています。それだけに、キリングループの発酵・バイオテクノロジーによるイノベーションで健康の未充足ニーズに応えていくことは、当社グループが「世界のCSV先進企業」を目指す上でも不可欠な取り組みです。食領域、医領域における長年の研究成果や販売チャネルなどを活用し、2027年度までにヘルスサイエンス領域全体で売上収益2,000億円、事業利益率15%の目標達成を目指します。

今回私が確信を深めたことは、経営環境が激変する中で生き残るためには、社会課題解決への取り組みにより人と社会から必要とされる会社でなければならないということです。世界における健康課題の解決のために、食領域と医領域で培った技術、資産を最大限に活用し、ヘルスサイエンス領域の立ち上げ、育成を図ります。医薬事業が当社グループのポートフォリオの重要な柱へと成長したように、ヘルスサイエンス事業についても将来の柱となるよう、私自らが先頭に立って牽引していきます。

  • ファンケルの持分法利益は含まず(シナジーは含む)。

2019年中計 基本方針

  • 2019年中計 基本方針の図

組織能力の強化
DX推進と多様な人材の力でイノベーションを実現

企業の持続的な成長に何より必要となるのがイノベーションであり、お客様に共感していただける商品・サービスを提供し続けなければ、変化する社会やお客様の要望に応えることはできません。そのためには、研究開発の強化はもちろん、お客様の潜在的なニーズやウォンツを掘り起こすマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が欠かせません。DXは2つの取り組みを進めていきます。1つは既存事業の業務効率化によるコスト削減、もう1つは新たな市場を生み出すための新規事業への活用です。とりわけ、お客様一人ひとりの健康ニーズへの対応が求められるヘルスサイエンス領域における新規事業ではDXの活用が不可欠となります。

さらに、これら事業活動の担い手となる人材の確保・育成の強化にも注力していきます。人材の力は多様性ある組織でこそ最大限に発揮されます。そこで近年は、さまざまな分野で活躍し、経験を積んできた人材を積極的に外部から採用(キャリア採用)しています。将来的に、部門によっては3分の1、あるいは半数がキャリア採用でも良いと考えています。多様な能力や経験をもつ人材が一緒に仕事をすることで、これまでにない新たな価値が生まれるものと期待しています。そのためにも、多様な人材が切磋琢磨して能力を最大限に発揮し、一人ひとりが働きがいを実感できるような組織風土づくり、労働環境の整備を進めていきます。

ESGの取り組み
グローバルな視野に立って「健康」と「環境」の課題解決に貢献

当社グループは、「酒類メーカーとしての責任」を前提に、「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」の3つを重点課題としてCSV経営を推進していますが、昨今のコロナ禍の中で最も注目されているのが「健康」です。2020年度は、プラズマ乳酸菌を配合した「iMUSE」飲料の販売数量が前年度比2.4倍に急拡大したほか、資本業務提携しているファンケルからもプラズマ乳酸菌を使ったサプリメントが発売されました。今後は、国内だけでなく世界にプラズマ乳酸菌を提供し、世界の人々の健康な暮らしをサポートしていきます。

  • プラズマ乳酸菌入り飲料 販売数量実績推移の図

    プラズマ乳酸菌入り飲料 販売数量実績推移

一方、「環境」分野についても、2020年2月に改訂した「キリングループ環境ビジョン2050」において、目指す姿を従来の「ネガティブインパクトの抑制」から、「ポジティブインパクトの創出」まで範囲を広げるよう大きく舵を切りました。優先課題である「気候変動」「水資源」「生物資源」「容器包装」という4つの領域で、実効性のある取り組みを進めています。例えば、「気候変動」の領域では、同年11月に電力の再生可能エネルギー比率100%を目指す企業で構成される国際的な環境イニシアチブ「RE100」に加盟したほか、同年12月にはグループ全体の温室効果ガス(GHG)の中期削減目標が、国際的な環境イニシアチブ「SBTi」の新基準「1.5℃目標」の認定を取得しました。

ガバナンスの強化も図っています。現在、当社の取締役会は過半数が社外の人材で占められており、女性や外国籍の方も在籍しています。取締役会の多様性が強化されたことにより、さまざまなキャリアや専門領域を備えたメンバーによる活発で質の高い議論が行われ、イノベーションの創出、規律をもった投資、リスクマネジメントの強化など、ガバナンス機能が向上しました。指名・報酬諮問委員会も、委員長を含む過半数が独立社外取締役です。このようなステークホルダーの視点を踏まえた運営は一定の評価を受けており、日本取締役協会が主催する「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2020」でGrand Prize Company(大賞)に選出されました。

  • キリングループ環境ビジョン2050 ポジティブインパクトで、豊かな地球をの図

世界のCSV先進企業を目指して持続的な成長を果たす

コロナ禍の収束は未だ見通せない状況ですが、この厳しい環境下でも当社グループはCSV経営の軸を決してぶらすことなく、ステークホルダーの要請に応えた経営を推進していきます。そして、「世界のCSV先進企業」を目指し、持続的な成長を果たしてまいります。皆様には、これからも変わらぬご支援をお願い申し上げます。

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