トップメッセージ

社長COOメッセージ

2024年7月

キリングループは、酒類事業・飲料事業・医薬事業・ヘルスサイエンス事業の多角的な事業を通じて、社会的価値と経済的価値の両立を目指すCSV経営を実践してきました。これまでも、「グループ・マテリアリティ・マトリックス(GMM)」に環境に関する4つのテーマを位置付け、統合的にアプローチしていますが、近年ビジネスと環境の関係性やそのあり方の変化を感じさせる出来事が相次いでおり、そのような取り組みの重要性がますます高まっていることを実感しています。

2025年は産業競争力と気候変動対策の両立に関する議論が活発化し、一部の金融当局や機関は国際的な脱炭素の枠組みからの脱退やサステナビリティの規制緩和の動きが見られています。一方では、大規模森林火災など気候災害が頻発しています。経営者は、こうした不確実性の高い経営環境下で、環境経営の舵取りを行う必要があります。競争力を維持しつつ、気候変動への適応や脱炭素社会への移行を戦略課題として加速させることが極めて重要です。キリングループでも、2024年9月に北米のクラフトビール会社New Belgium BrewingのAsheville Breweryがハリケーン被害を受け、一時的に閉鎖を余儀なくされました。現地の従業員の安全やウェルビーイングを最優先し、協力会社や地域社会との連携により、年内に再開に至りましたが、気候変動の影響がグループのビジネスに及んでいることを再認識した出来事でした。

私たちは、事業の基盤である自然資本の重要性を認識し、環境課題の動向や地域性を考慮しながら、事業を通じて社会に良い影響を与えることを目指しています。2050年までに「ポジティブインパクトで、豊かな地球を」との目標を掲げ、環境課題の解決に向けた具体的な取り組みを統合的に進めていく考えです。

「CSVコミットメント」は、グループ経営理念を社会的存在意義に翻訳した「CSVパーパス」の実現に向けて、各事業が取り組む中長期のアクションプランです。毎年目標値の見直し・アップデートを行っており、四半期ごとにモニタリングされるその実行状況は、キリンホールディングス取締役会にも報告され、業績評価にも連動しています。環境に関するKPIを含むCSVコミットメントへの取り組みを通じて、グループ全体で社会的価値を創出するとともに、競争力強化と事業の成長という経済的価値に繋げてCSV経営を深化させます。

リーダーとしての私の信念は「現場に行って、現物を見て、現実を知る」であり、環境への取り組みにおいても同様です。農園における生物多様性認証取得支援、サプライチェーンや事業所における脱炭素ロードマップの着実な推進、環境配慮型製品の発売、パッケージイノベーション研究所におけるケミカルリサイクルの社会実装に向けた研究や流通・販売段階における効率化など、バリューチェーンの各段階における1つひとつの現場でのアクションが具体的な進捗に繋がっています。今後も、現場の声を重視し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。

キリンホールディングス株式会社
代表取締役社長COO 最高執行責任者
グループ事業執行責任者
南方 健志

担当役員メッセージ

2024年7月

「2024年、地球温暖化は産業革命以前の平均気温を1.54℃上回る記録的な数値に達し、世界中の多くの地域が前例のない壊滅的な異常気象にさらされた」という世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でのメッセージは、1.5℃目標に向けて取り組みを進める私たちにとって衝撃的なものでした。また、グループのNew Belgium BrewingのAsheville Breweryが気候災害の重大な被害を受けたことや、度重なる熱波の影響でブラジルのオレンジの供給が長期・大幅に停滞したことからも、地球環境問題がキリングループのビジネスに影響を及ぼしていることを実感した一年でした。私たちが取り組んできた気候変動・生物資源・水資源・容器包装といった環境課題へのアプローチと、ポジティブインパクトの創出がこれまで以上に求められています。

「ダブルマテリアリティ」とは、自社が取り組むべき課題の特定にあたり、環境や社会が企業に与える影響(財務マテリアリティ)に加えて、企業活動が外部の環境や社会に与える影響(インパクトマテリアリティ)も考慮する考え方であり、規制対応やステークホルダーとの関係構築、長期的企業価値の向上の観点から今後の企業にとって重要な考え方です。キリングループはCSV先進企業を目指す立場として、外への影響・中への影響を考え、外部不経済を低減する環境経営を目指します。

キリングループは、自然の恵みを原材料に、自然の力と知恵を活用して事業活動を行っており、生物資源の保全と持続可能な利用はマテリアリティの1つです。CSVの推進にあたっては、変化を続ける外部環境と事業ポートフォリオに合わせてリスク認識をアップデートしていく必要があります。ヘルスサイエンス領域を強化する成長戦略の中で、近年Blackmoresやファンケルがキリングループに加わったことから、2025年に「キリングループ持続可能な生物資源利用行動計画」を改定する予定です。化粧品や健康食品に含まれるパーム油やサプリメントに含まれるフィッシュオイルの持続可能な利用に向けた具体的な取り組みや目標を検討しています。

キリンホールディングス株式会社
常務執行役員
藤川 宏