[ヘルスサイエンス領域]

「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分の認知症予防に関する研究が日本認知症予防学会の学会認定を取得

~特定の食品成分では「βラクトペプチド※1」に続く2例目~

  • 研究・技術

2021年9月30日

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典)の独自素材である「熟成ホップ」について、同素材に含まれるビール苦味成分が、一般社団法人 日本認知症予防学会(理事長 浦上克哉)のエビデンス創出委員会による審査で、「グレードB」として2021年8月5日(木)に認定されました。
「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分は認知症予防(一次予防)効果※2の可能性があると認定されました。特定の食品成分の研究情報では、グレードA認定を取得した当社独自成分「βラクトペプチド」に続く2例目となります。
※1 乳タンパク質に由来し、トリプトファン‐チロシン(WY)のアミノ酸配列を含み認知機能改善作用を有するペプチドの総称。「βラクトペプチド」の主要な1成分で、グリシン‐トレオニン(スレオニン)‐トリプトファン‐チロシン(GTWY)という4アミノ酸配列のテトラペプチドを持つ「βラクトペプチドの1つであるGTWYペプチド(βラクトリン)」が2020年9月にグレードA認定を取得した。
※2 一般社団法人 日本認知症予防学会が考える広義の予防の一つ。具体的には1次予防が認知症の発症予防、2次予防が認知症の早期発見、早期治療、早期対応、3次予防が認知症の進行予防。

一般社団法人 日本認知症予防学会について

一般社団法人 日本認知症予防学会は、認知症の発症予防、認知症の早期発見・早期治療・早期対応、認知症の進行予防の3つの予防に取り組むことを目的として設立された学会です。認知症予防のためのエビデンス創出とそれに基づいた実践活動、 認知症予防のための人材育成、さらに「認知症予防」の普及啓発などを行っています。

エビデンス審査とグレードについて

日本認知症予防学会のエビデンス評価委員会によって、申請内容(臨床試験での取得エビデンス)の評価を行い、グレード特AからEの6段階を判定する。

エビデンス評価の概要

・審査対象:熟成ホップ由来苦味酸
・審査結果:グレードB <認知症予防(一次予防)効果の可能性がある。>

研究内容

高齢化が進む国内において、認知症や認知機能低下は大きな社会課題となっています。認知症発症後の有効な治療方法が十分ではないことから、食事などの日常生活を通じた認知機能の維持改善に注目が集まっています。適量の酒類の摂取は認知症の防御因子として知られおり、当社はこれまで東京大学と共同で、ビール苦味成分である「イソα酸」や「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分のアルツハイマー病予防効果を非臨床試験で解明してきました※3, 4。「イソα酸」や「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分は、消化管の苦味受容体を介した「脳腸相関」の活性化により認知機能の改善、脳内炎症の抑制、脳内アミロイドβ沈着抑制を通じて、アルツハイマー病予防効果を示すことや、抑うつ状態を改善することを報告しています。
※3 文献情報
論文タイトル:Iso-α-acids, Bitter Components of Beer, Prevent Inflammation and Cognitive Decline Induced in a Mouse Model of Alzheimer's Disease
発表者:阿野泰久、星朱香、高島明彦、中山裕之、他
雑誌名:J Biol Chem. 2017 Mar 3;292(9):3720ー3728. doi: 10.1074/jbc.M116.763813.
※4 文献情報
論文タイトル:Hop bitter acids containing a β-carbonyl moiety prevent inflammation-induced cognitive decline via the vagus nerve and noradrenergic system.
発表者:阿野泰久、大屋怜奈、近藤恵二、高島明彦、中山裕之、他
雑誌名:Scientific Reports, 2020 Nov 18;10(1):20028. doi: 10.1038/s41598-020-77034-w.

また、当社は慶應義塾大学や順天堂大学と共同で、「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分が記憶力の想起機能や注意力の制御機能を改善すること、気分ストレス状態を改善することを健常中高齢対象で二重盲検のランダム化比較試験にて確認しています※5, 6。
※5 文献情報
論文タイトル:Effects of Hop Bitter Acids, Bitter Components in Beer, on Cognition in Healthy Adults: A Randomized Controlled Trial
発表者:福田隆文、梅田聡、阿野泰久、他
雑誌名:J Agric Food Chem. 2020 Jan 8;68(1):206-212. doi: 10.1021/acs.jafc.9b06660.
※6 文献情報
論文タイトル:Supplementation with Matured Hop Bitter Acids Improves Cognitive Performance and Mood State in Healthy Older Adults with Subjective Cognitive Decline.
発表者:福田隆文、大沼徹、新井平伊、阿野泰久、他
雑誌名:J Alzheimers Dis. 2020;76(1):387-398. doi: 10.3233/JAD-200229.

  • 図:「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分による認知機能および気分状態改善
    ビール苦味成分でもある「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分は摂取後脳腸相関を活性化し、前頭前野に関連した認知機能や気分状態を改善する。

さらに現在、順天堂大学との共同研究講座において、軽度認知機能障害を有したパーキンソン病患者を対象とした「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分の有効性を評価する特定臨床研究を実施しております。

「キリン脳研究」について

日本の平均寿命は伸び続けており、4人に1人が高齢者※7の「超高齢社会」となっています。2025年には高齢者のうち5人に1人が認知症になる※8と推計され、健康寿命の延伸は社会課題となっています。
キリングループでは、日々の明るい気持ちや悩みは脳の働きと密接に結びついていることに着目し、ヘルスサイエンスを中心とした「脳の健康」を守り新たなよろこびを生み出す「キリン脳研究」を進めています。
「キリン脳研究」は、キリンならではの発想と技術で脳の健康を守ることを通じ、社会課題の解決に向けて貢献するとともに、一人ひとりが社会の中で、自信や希望、そして気持ちのゆとりを感じながら暮らせるこころ豊かな社会の実現を目指していきます。
※7 内閣府 令和2年版高齢社会白書
※8 厚生労働科学研究費補助金 厚生労働科学特別研究事業. 日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究.
平成26年度総括・分担研究報告書. 2015.

キリングループは、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV※9先進企業となる」ことを目指しています。その実現に向けて、既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループが長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」技術をベースにして、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」(ヘルスサイエンス事業)の立ち上げ、育成を進めています。当社は、食を中心とした商品・サービスを通じて認知機能改善に貢献することを目指します。
※9 Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造。

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