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社外取締役インタビュー

より実効性の高い
ガバナンス体制を構築し
中長期的な価値向上を
支えていきます

社外取締役 岩田 喜美枝

岩田 喜美枝 IWATA KIMIE 社外取締役

Q指名・報酬諮問委員会の委員長として現在のガバナンス体制をどのように評価していますか。
Aキリングループは以前からガバナンスの改善に熱心な会社でしたが、2015年に示されたコーポレートガバナンス・コードへの対応をきっかけに、さらにレベルアップできたと考えています。当初示された大きな課題は、より業績連動性の高い役員報酬体系の整備と最高経営者の候補者計画(サクセッションプラン)の策定でした。そこで指名・報酬諮問委員会を中心に、役員報酬体系の見直しとサクセッションプランの策定に取り組んできました。
2017年からスタートした新しい報酬体系では、経営計画の達成や企業価値の向上をより強く意識づけるため、報酬に占める業績連動の割合を約50%にまで高めました。業績連動の仕組みとしては、単年度の事業利益目標の達成に連動する賞与の制度だけではなく、株主との中長期的な価値共有を促進するため、新たに株式報酬を導入しました。仕組みの詳細についてはIR活動で情報開示し、株主総会でもご説明しています。今後も委員会では、どういう指標がよいか、また、業績連動の度合いが適切かどうかなどを見直していくと思いますが、ガバナンス強化の観点から非常に望ましい役員報酬システムになったと考えています。
一方、サクセッションプランに関しては、かなりの時間をかけて、キリンホールディングスの「CEOに求められる資質」や「透明性の高い候補者の決定プロセス」について議論を重ねてきました。多くの日本企業の社長人事は、これまで外部から見るとブラックボックスだったと思いますが、当社のサクセッションプランでは、執行側から提案された候補者が適任かどうかを、指名・報酬諮問委員会で審議します。
社外役員が中心の委員会で議論すると、良いことが2つあります。1つは公平性で、候補者の選定において客観的な視点が確保されること。もう1つは、多面的な評価ができることです。委員会はいろいろな専門性をもつ役員の集まりですから、様々な観点から後継者候補を評価していきます。また、プランを形成したことで、次世代の候補者を、少し時間をかけて、計画的に育成できるようになったのも大きなメリットです。
Qダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに対する評価をお聞かせください。
A他の上場企業の役員を務めていた頃、キリングループで始まった女性管理職候補の育成プログラムの講師としてお招きいただいたことがあり、当時から女性の活躍推進にとても熱心な企業の1社だと感じていました。また、経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれるなど、客観的にも先進的な企業と評価されていると思います。
もちろん、まだ課題もあります。女性活躍には2つの側面があり、1つは出産して子育てをしながらも「仕事を継続できる」ことです。当社では、手厚い制度を設け、育児休暇の取得後は仕事に復帰するのが当たり前になってきています。ただし、もう1つの側面である「キャリアアップ」、すなわち働き続けている女性がスキルアップして重要なポストで活躍できているかといえば、熱心に取り組んでいるものの、時間がかかるものでもあり、まだ成果が出るまでには至っていないと感じています。それでも、女性初の執行役員が誕生したのをはじめ、工場長や統括本部長として活躍する人も現れています。また、2021年までに女性の管理職を全体の12%を占める300名にする目標を掲げています。ぜひ若手社員のうちからじっくりと育成してキャリアアップを支援していただきたいと思います。
社外取締役 岩田 喜美枝
Q最後に取締役会の実効性に関する評価や今後の課題をお聞かせください。
A2016年に、取締役と監査役による自己評価形式で、取締役会の実効性評価を開始しました。これまでに実施した評価では、総じて実効性が確保されているという結果が出ており、また、運営改善のPDCAサイクルも回りつつあります。例えば、従来は取締役会に挙がる議題の数が多かったのですが、評価の中で出てきた意見をもとに議論した結果、執行に委ねる案件を整理し、取締役会での検討対象を「グループ経営視点での重要な意思決定」と「グループ全体の監督」に絞り込みました。これによって、重要な議題に多くの時間を配分できるようになり、取締役会のレベルアップにつながったと思います。
私が取締役に就任してからの2年間で最も大きな議案は、ブラジルキリンの売却でした。この議案についても、ブラジルでの事業を継続するか、それとも売却するか、また事業売却の条件について取締役会で何度も議論し、最終的に重大な意思決定をしました。さらに、ブラジルキリンの買収から売却に至るまでのすべてのプロセスを総括し、このケースから何を学ぶかも時間をかけて話し合い、取締役会全体での議論と学びが深まりました。これから策定する次の長期経営構想、また中期経営計画や今後の年度計画なども、取締役会において実質的な議論を深めていく予定です。
私たちは、これからもグループとして成長していけるよう一層明確な戦略を打ち出す必要があります。社外取締役として今後も重要な意思決定や業務執行の監督などを通じて、キリングループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上への貢献を果たしていければと思います。

経歴

社外取締役 岩田 喜美枝

1971年、労働省入省。厚生労働省雇用均等・児童家庭局長を最後に2003年退官。同年(株)資生堂に入社、2008年より代表取締役執行役員副社長。2012年当社社外監査役、2016年当社社外取締役に就任。指名・報酬諮問委員会の委員長も務める。