[ここから本文です。]

トップメッセージ

グループの持続的な成長に向け
構造改革と経営基盤強化が順調に進捗

キリングループは、2016年にスタートした長期経営構想「新KV2021」前半の「2016年-2018年中期経営計画(2016年中計)」において、「ビール事業の収益基盤強化」「低収益事業の再生・再編」「医薬・バイオケミカル事業の飛躍的成長」という3つの重点課題を掲げ、「構造改革による、グループの再生」に全力で取り組んできました。
この2年間、低収益事業の改革で大きな成果を上げたのに加え、2017年は国内ビール事業の収益基盤強化が大きく前進しました。また、各事業の改革と並行して非中核資産の流動化を実行するなど、グループの構造改革は想定以上のスピードで進んでいます。その結果、2017年度は2016年中計3年間のキャッシュフロー創出目標を1年前倒しで実現したほか、過去最高の利益水準を達成することができました。
また、グループ全体に計画をやり切るのだという姿勢も着実に浸透していると認識しています。計画の最終年である2018年も引き続きスピード感をもって構造改革を進め、中核となる事業領域での利益成長を実現することで、必ずや定量目標、利益ガイダンスを達成できると確信しています。
さらに、こうした構造改革とともに、コーポレートガバナンスのさらなる進化や、「CSVコミットメント」の策定によるCSV経営の強化など、株主価値最大化を目指してグループ経営基盤をより強固なものとしてきました。
これらの取り組みによって「新KV2021」実現に向けた“地固め”はできたと判断しており、後半の2019年−2021年中期経営計画で持続的な成長を目指していきたいと考えています。

長期経営構想 新KV2021「新キリン・グループ・ビジョン2021」

キリングループ2016年-2018年中期経営計画

次年度以降を見据え既存事業の利益成長に注力

このように事業構造改革は想定以上のペースで進捗していることから、2018年は、引き続き2016年中計の定量目標と利益ガイダンスの達成を目指すと同時に、次期中期経営計画、さらにはその先まで見据えた施策を前倒しで実施していきます。第一優先課題は「既存事業の利益成長」の実現です。

株主価値最大化に向けた取り組み

既存事業の利益成長

既存事業の中でも、国内酒類のキリンビールとオセアニアのライオン酒類事業については、より収益性の高い事業へと発展させていく方針です。ご存じのように、日本、欧米などの先進諸国ではビール市場の成熟化が進んでいます。国内のビール類総消費量はピーク時の約4分の3にまで減少しています。少子高齢化を背景に今後も減少傾向が続くと予想され、中長期的に大きく販売数量を伸ばすのは極めて困難な状況にあります。そのため国内ビール市場では長らく厳しい価格競争が続いてきましたが、2017年6月の酒税法等改正とこれに伴う酒類の公正な取引に関する基準の施行を契機として、ビール業界は収益を重視する方向に大きく変化しました。
この環境変化を捉えて、キリンビールではいち早く競争の軸を「価格」から「ブランド」へと転換させ、これまで以上にブランド強化に力を注いできました。すなわち、販売促進費の抑制に法改正前の同年1月から前倒しで取り組む一方、マーケティングの“費用”をブランド資産への“投資”と位置づけることにより、魅力ある商品の提案や飲食店・量販店でのブランディングに資源を投入しています。例えば、2017年7月にフルリニューアルした「一番搾り」は、より一層進化したおいしさとそれを表現した広告がビールを愛飲される幅広い層のお客様から高く評価され、販売数量は市場を上回るペースで増加しています。また、ビールの魅力をさらに高めて市場を活性化していくために、クラフトビール事業の拡大にも注力しています。2018年以降も、投資する商品を一層絞り込み、お客様から長期的に支持される強いブランドの構築に取り組むと同時に、クラフトビールやRTDなど成長カテゴリーに積極的に投資します。そして、これらの施策によってキリンビールの再成長を図り、中期的には収益性をグローバル企業レベルに高めていきたいと考えています。

ライオン酒類事業では、豪州におけるAnheuser-Busch InBev(ABI)ブランドのライセンス販売終了に伴う利益減少分を回復させるべく、主力ブランドの価値向上やクラフトビールの拡販など、自社の強みを活かした展開に力を注いでいます。2018年もこれらの施策を一層加速させ、ライセンス販売時の利益水準を目指します。
一方、ミャンマー・ブルワリー、キリンビバレッジ、協和発酵キリンについては、グループの成長を牽引する事業と位置づけ、成長戦略を推進していきます。
ミャンマー・ブルワリーは、主力の「ミャンマービール」ブランドの強化や、製造キャパシティの整備・拡充などによって持続的な成長を図ります。

代表取締役社長 磯崎 功典

キリンビバレッジでは、この2年間、不採算取引の見直し、サプライチェーンコストの削減などの改革によって、収益性を大きく改善することができました。そこで2018年からは、これまでの「利益ある成長」から「成長による利益創出」へとステージアップし、強固なブランド体系の構築や新領域の開拓といった積極的な成長戦略を推進し、2021年までに事業利益率を10%に引き上げる計画です。また、医薬・バイオケミカル事業を担う協和発酵キリンでは、グローバル戦略品「KRN23(ブロスマブ)」「KW-0761(モガムリズマブ)」の開発が順調に進んでいます。特に、「KRN23」は、2018年2月に欧州において、4月に米国において承認されており、年内に欧米での販売を開始できる見込みです。こうしたグローバル戦略品開発のほか、販売体制整備なども含め、同社の5カ年計画は順調に進捗しています。グループの中長期的成長を牽引するグローバル・スペシャリティファーマ(GSP)への飛躍を目指して、今後も計画を着実に実行していきます。

  • 栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料のこと。Ready to Drinkの略称

中期経営計画 定量目標の進捗(ROE/EPS年平均成長率の実績と見通し)

  • 2015年度のROE、平準化EPSは、日本基準に基づくのれん等償却前ROE、平準化EPS 2016年度以降は、IFRSに基づくROE、平準化EPS

無形資産の強化と新規事業の育成でCSV経営をさらに加速させる

また、2018年以降「既存事業の利益成長」の実現に最優先で取り組むとともに、中長期的な成長に向け、CSV経営をさらに加速させていきます。
キリングループのCSV経営は、「酒類メーカーとしての責任」を前提に、「健康」「地域社会への貢献」「環境」といった社会課題への取り組みを通じた価値創造によって、企業価値を高めながら持続的な成長を追求していくものです。
このCSV経営をさらに進化させ、お客様の潜在ニーズを解決しながら社会にインパクトを与えるビジネス・商品・サービスを創り出していくために、次の2つの方針に基づいて取り組んでいきます。

ひとつ目は、外部環境の変化に対応しながら、グループが長年事業を成長させる中で培ってきた経営資本―「人材」「ブランド」「研究開発」「サプライチェーン・IT」の4つの無形資産をより一層強化していくことです。とりわけ重要なのが、成長の原動力となる「人材」の強化です。人材・組織の多様性を重視し、新卒採用だけでなく経験者採用をさらに拡大し、様々な経験やスキルを積んできた人材を積極的に活用していきます。また、働き方改革を加速させ、社員一人ひとりが能力をフルに発揮できる環境の整備に力を注ぎます。「人材」を原動力として、ブランド価値のさらなる向上や、免疫など強みをもつ領域でのさらなる研究開発の推進、生産技術やエンジニアリング技術を含めたサプライチェーン強化と最適化、ITを活用した業務プロセス革新などに注力し、より強靭な事業基盤を築きます。

そしてふたつ目が、これら既存事業の強みに立脚しながら、この先10年を見据えたキリングループの成長を支える新たな事業を創造・育成していくことです。特に、キリングループならではのユニークな事業ポートフォリオによるシナジー効果を創出し、健康・未病領域での新規事業をキリンホールディングス主導のもとで育成していきます。これまでキリングループが培ってきた有形・無形の資産を活用することで、大規模な投資に頼らず、キリンならではの新しい価値を創造することができると考えています。ただし、グループ内部で賄えない機能やリソースがあれば、戦略的提携やM&Aも柔軟に活用していきます。
キリングループでは、今後もスピード感をもって構造改革を推進し、「既存事業の利益成長」を追求するとともに、CSV経営を着実に実践することによって価値創造、イノベーションを加速させ、グループの持続的な成長と企業価値向上を果たしてまいります。ステークホルダーの皆様におかれましては、引き続きのご支援をよろしくお願い申し上げます。

経歴

代表取締役社長 磯崎 功典

1977年、キリンビール入社。サンミゲル取締役、キリンホールディングス経営企画部長、同社常務取締役などを経て、2013年よりキリン(株)代表取締役社長(現任)。2015年、当社代表取締役社長に就任。