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非財務資本の強化
R&D戦略:「確かな価値を生む技術力」へ

キリングループが持つ強み技術を結集し、食領域・医領域と「医と食をつなぐ事業」で新たな価値を創造し世界の社会課題解決に貢献します

「食」と「医」、2つの事業領域を有するキリングループは、祖業であるビール事業で培ってきた発酵・バイオなどの技術、1980年代の多角化展開で得られた医薬・バイオケミカルなどの技術を強みとして、さらなる価値創造を実現し社会課題の解決に貢献していきます。さらに、「医と食をつなぐ事業」を新たな事業ポートフォリオとすべく、既存事業で獲得してきた強いエビデンスをもった独自素材と技術力を競争力の源泉として、オープンイノベーションも活用しながら持続可能なキリングループの柱を目指して育成していきます。
食の領域では、サプライチェーン全般にわたって、品質および収益性の向上につながる技術開発を進め、新たな価値をもった商品を開発することで、豊かな社会の実現に貢献していきます。
医の領域では、最先端のバイオテクノロジーを駆使し「腎」「がん」「免疫・アレルギー」「中枢神経」の4領域を研究開発の中心に据え、新たな医療価値の創造を目指します。
「医と食をつなぐ事業」においては、「生活サポート」「免疫機能」「脳機能」「植物スマートセル」の4つの分野で新たな価値を提供していきます。顧客セグメントとしては、大きく分けて「特別ニーズ」と「疾患手前の段階」の2つを考えており、前者では、医療では充たされないアンメットメディカルニーズに対して高機能素材等を用いた「食」を通じて貢献します。後者では、医薬事業を持つキリングループならではの知見を活かし、個別化ニーズを満たす独自のビジネスを構築していきます。

Focus植物スマートセル

植物細胞を使ったスマートセル生産技術を確立
「医」や「医と食をつなぐ」事業分野への応用を進めています

キリン独自の有用物質生産プラットフォーム

バイオ医薬品を製造するときのプラットフォームには、微生物や動物細胞を使うことが主流です。複雑な構造を持つタンパク製造には動物細胞が用いられますが、その製造には高度な環境制御の技術と設備が必要とされます。近年、簡易な設備で医薬品製造が可能になる、植物を使った製造プラットフォームが着目されています。キリングループは、この植物の大量培養技術を長年開発してきており、協和キリンの「動物細胞」、協和発酵バイオの「微生物」に加えて、「植物細胞」という3つの有用物質生産プラットフォームに強みを持つ、世界でも稀有なグループです。
キリンは、1980年代からアグリバイオビジネスを手掛け、植物に関するさまざまな技術を蓄積してきました。その中で特に大きな成果をあげたのが、培養した植物体をもとに、茎や芽、不定胚を、液体の培地で大量に増殖する独自の技術です。それまでにも大量増殖技術は開発されていましたが、多くは手作業でその生産には手間のかかるものでした。キリンは、高い生産効率の液体培養を用いて、多数の植物種において商業生産を実現し、アグリバイオビジネスを支えていました。
また商業生産においては、低コスト化も重要です。ここでもキリンは独自の研究により、高額な大型培養槽設備に代わる、安価な袋型の培養槽システムを開発しました。このシステムでは、培養槽を特殊なプラスチック製の袋で作製することで簡易化や軽量化を図り、少人数でも大量培養が簡単に低コストで行える仕組みを構築しています。
キリンは、この技術を発展させ、植物細胞による有用物質生産を行う植物スマートセル技術に取組み、無菌での培養という特長を生かし、高度な品質管理が要求される医の領域での研究開発を進めています。

2027年には医薬品原料の製造を目指す

2016年、国家プロジェクトとしてNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が5カ年の計画でスタートさせた「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」というスマートセルプロジェクト事業に参画。骨粗しょう症などの医薬品に用いられる活性型ビタミンD3を、植物を利用した増殖技術により、効率的に大量生産するプロセスの開発に取り組んでいます。
また、2018年には、植物細胞による医療関連の研究用試薬や医薬品関連の原料生産プロセスの実証施設として、クリーンルーム仕様のパイロット施設である「プラントリサーチセンター」を基盤技術研究所の敷地内に設立。植物バイオのプラットフォーム技術をブラッシュアップし、医薬品関連の原料事業参入に向けた基盤づくりを推進しています。
今後の展開として、2021年に医療関連の研究用試薬事業、2024年には動物用医薬品の原料事業と、段階的にビジネス化を推進し、2027年には医療用医薬品の原料事業という高付加価値分野への参入を目指しています。