水資源の取り組み
持続可能な水資源利用
水はキリングループにとって基本的な原料であるだけではなく、製造設備の洗浄などにも欠かせません。
2014年からは水リスク・水ストレス調査で定量的に把握し、各事業所で水ストレスに応じた節水を行ってきました。原料農産物の生産地での水リスクについても、TCFD提言に基づくシナリオ分析で調査・把握し、実施可能な地域で試行的な対策も進めています。
キリングループは、科学的な水資源目標を設定するために、Science Based Targets Network※1が主催するSBTs for Nature※2のコーポレートエンゲージメントプログラムに国内医薬品・食品業界として初めて参画しています。
- 自然資本に関する科学的根拠に基づく目標を設定し、持続可能な地球システムの実現を目指す団体。
- 新たな自然資本の目標設定イニシアティブ
主な目標は以下の通りです。
- 水ストレスの高い製造拠点における用水使用量原単位(ライオン)
2025年 2.4kl/kl未満(CSVコミットメント)※1
2025年 2.4kl/kl以下(非財務目標)※2
2024年 3.0kl/kl以下(非財務目標)※2
- Tooheys Brewery,Castlemaine Perkins Brewery, James Boag Brewery, Pride
- Tooheys Brewery,Castlemaine Perkins Brewery, James Boag Brewery
水リスク評価結果
節水達成状況
※ 上記は、すべて2022年6月末時点の情報です。
紅茶農園内の水源地保全活動
気候変動による原料農産物生産地における渇水や洪水リスクが将来的に増大することが明らかとなっています。
スリランカ紅茶農園へのレインフェレスト・アライアンス認証取得支援で、毎年行っている現地での農園マネージャーとのエンゲージメントの中で、スリランカ政府がマイクロ・ウォーターシェッドの重要性を理解し保全・管理するためのマッピング作業までは行ったものの、資金不足のために水源地保全活動が停滞していることが分かりました。
そこで、認証取得支援先の紅茶農園と周辺地域の持続性をより高めるために、2018年から農園内の水源地保全活動を開始しました。
この活動では、農園のマイクロ・ウォーターシェッドが他の目的に使用されないように柵で囲んで保全し、周囲にその地域固有の在来種を植林します。これにより、単一栽培の紅茶農園に植生の多様性を与えるとともに、集中豪雨などで山の斜面から流出した土砂が水源地に流れ込むことを防ぎます。
キリングループは、対象となる水源地周辺に住む住民に対して、水の大切さやマイクロ・ウォーターシェッドがどのような機能を持っているかなどを教える教育プログラムを提供しています。
一部の農園では茶摘みさんの保育所や小学校のプログラムの中に組み込むなどの工夫もしています。
水源の森活動
工場の水源地を守る活動である「水源の森活動」は、1999年に業界に先駆けてキリンビール横浜工場の水源地である神奈川県丹沢地区の森から始まり、現在も全国11カ所で取り組んでいます。水源地の森林を管理する自治体や関係先との中長期の協定をベースとして、植樹、下草刈りや枝打ち、間伐などを進め、現在では多くの森が明るく茂る森になってきています。一部の場所では、希望するお客様にも活動に参加していただいています。
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キリン富士山麓水源の森での水源の森活動
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地下水涵養
「『世界文化遺産』を目指す阿蘇エリア草原再生プロジェクト」では、阿蘇の草原景観保全に向けた「野焼き再開支援」を実施しています。豊富な地下水を涵養する阿蘇の広大な草原を守ることは、メルシャン八代工場の原料として使用する水を守ることにつながります。2021年には、八代工場から6人がこの活動に参加しました。草原の維持は、草原に適応した希少植物の生存にとっても大切になっています。
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輪地切り
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輪地焼き
製造
工場で使う水の多くは、設備や配管の洗浄・殺菌工程で使用されます。洗浄できていることを品質面で確認・保証できる体制・仕組みを整えるとともに、無駄な水を使わないように流量・流速を厳密に管理しています。その上で、用途に応じた水の再利用を積極的に推進しています。
例えば、配管や設備などの洗浄工程で使った最後の「すすぎ水」は水の清澄度が比較的高いため、最初に配管を洗う工程で利用することが可能です。このように、洗浄で使った水を水質に応じた用途で繰り返し使うカスケード利用を行っています。回収できる水の量と使用する水の量のバランスやタイミングを合わせるなど、確実に洗浄できていることを保証するためには設備を使いこなすノウハウが必要です。キリングループでは、さまざまなノウハウを共有・蓄積し、高いレベルの節水を実現しています。
ライオンは醸造所所在地域の水道水の利用を最小化するために、2009年にオーストラリアのクイーンズランド州政府と提携して排水を回収利用するための逆浸透(RO)プラントをCastlemainePerkins Breweryに設置しました。ライオンは水のリサイクルプラントを導入し、醸造に使用する水の半減を目指しています。逆浸透膜で処理された水は洗浄、冷却、低温殺菌など、製品に関連しないプロセスで使用されます。2021年のCastlemaine Perkins Breweryの用水原単位は2.8kL/kLとなり、世界トップクラスに迫る用水原単位を維持しています。
排水とバイオガス活用
キリングループでは、使い終わった水は法律が求める以上の自主基準を設定して浄化し、河川や下水道に放流しています。排水基準の厳しい流域の工場では嫌気処理、好気処理の後、加圧浮上処理を行いリンや固形分を除去しています。好気処理、加圧浮上処理で排出された余剰汚泥は肥料や土壌改良材に再利用します。キリングループは水生生物生態系へ配慮し、きれいな水を海洋や河川、下水道に放流しています。
ビール工場では、製造工程から発生する排水を浄化するために嫌気処理設備を導入しています。嫌気処理では、従来の好気処理のように通気のための電力が不要となるだけではなく、嫌気性微生物による処理の過程で副生成物としてメタンを主成分とするバイオガスが発生するため、これをバイオガスボイラーや、コージェネレーションシステムなどに活用できます。バイオガスは、モルトなどの植物性原料由来による再生可能エネルギーであり、CO2フリーの燃料です。
流域・海岸清掃活動
キリングループの各工場では、行政やNGOと協力して周辺の河川における清掃活動を中心とした環境保全活動を行っています。
キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャン、協和キリン、小岩井乳業などの各工場では、取水河川や近隣河川などを中心に、地域の環境美化および環境保全活動を行っています。協和発酵バイオ山口事業所では、従業員が薬液やブドウ糖液等を荷揚げする港湾施設である百間沖の清掃活動をしています。
水資源のグラフ
※ 上記情報は「キリングループ環境報告書2022」の開示内容を転載したものであり、2022年6月末現在の情報です。