気候変動対策を経営戦略に組み込み、脱炭素社会を牽引するグループへ

  • 環境

2022年07月19日

  • 気候変動対策を経営戦略に組み込み、脱炭素社会を牽引するグループへ

  • CSVコミットメント 気候変動の克服 代表的な成果指標と目標値:GHG(温室効果ガス)排出削減率 Scope1+2=50%(2030年)、Scope3=30%(2030年)(※) ※2019年比、事業会社ごとにも目標を設定  SDGsターゲット 7.2 13.1

  • CSVコミットメント 気候変動の克服 代表的な成果指標と目標値:GHG(温室効果ガス)排出削減率 Scope1+2=50%(2030年)、Scope3=30%(2030年)(※) ※2019年比、事業会社ごとにも目標を設定  SDGsターゲット 7.2 13.1

「キリングループ環境ビジョン2050」のもと、事業活動を通じて持続可能な地球環境を次世代につなげることを目指しています。重点課題の一つが、気候変動への対応です。「2050年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにする」という目標を掲げ、中期目標として「2030年までに2019年比でScope1とScope2を合計して50%削減、Scope3で30%削減」と設定しています。これは国際的なSBTイニシアチブ(Science Based Targets)より、産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた削減目標として承認を受けています。

GHG排出量削減に向けたロードマップの施策を着実に実行し、
事業と社会の持続可能性を高めていく

もし気候変動の影響で極端な渇水や洪水が起これば、農産物の生育は大きな打撃を受けると予想されます。酒類・飲料事業を中心に、水や農産物などの自然の恵みに支えられているキリングループにとって、気候変動対策は、優先課題の一つです。私たちは①気候変動対策として脱炭素社会をリードすること、②社会的価値と経済的価値を両立する施策を優先して実施することを戦略として据え、長期的には、気候変動対策によって事業の持続可能性が強化されている状態を目指しています。

目標達成のためには、大規模な設備投資や再生可能エネルギーの導入など、多くの資金を要します。当社グループはコスト削減効果の高い省エネルギー施策を早期に実施し、そのエネルギーコストの低減効果を原資に再生可能エネルギーを導入することで、グループ全体で気候変動対策に関する中長期的な損益中立を目指します。

2030年までの目標達成に向けて、GHG削減に向けたロードマップを策定しました。この計画を各事業会社の経営戦略に落とし込み、2022年-2024年中期経営計画に組み込んでいます。2019年以降、キリンビールとキリンビバレッジの工場ではヒートポンプ・システムを導入し、省エネ施策を展開した結果、エネルギーコストを一年間で約1.4億円削減するとともに、GHG排出量を4,700t削減しています。

昨今、企業に対する気候変動対策への要請は高まる一方です。日本国内では、CO2排出量に応じてコストを負担する仕組みとして、カーボンプライシングの導入が検討されています。こうした中、当社グループはロードマップの施策を着実に実行することでGHG排出量を削減するとともに、将来のカーボンプライシング導入に伴う減益リスクを低減させるために投資判断基準としてICP(Internal Carbon Pricing)を導入し、企業価値の向上を目指します。

  • グラフ:損益中立でのGHG削減計画

  • グラフ:GHG削減施策実施後のScope1+2排出量

責任ある再生可能エネルギーへの転換を推進

当社グループは、「環境ビジョン2050」で「早期にRE100(※)を達成するとともに、自社の使用エネルギーを100%再生可能エネルギー起源にします」と掲げています。それを受け2021年に再生可能エネルギーを導入する際のグループ方針を策定し、新たな再生可能エネルギー電源を世の中に追加していくことで、社会の脱炭素化に本質的に貢献していきます。また、環境破壊や人権侵害などのリスクのない「責任ある再生可能エネルギー」を調達していきます。

  • 使用電力の100%再生可能エネルギー化を目指す、国際的な環境イニシアティブ

これまでキリンビールの9つの全工場において大規模な太陽光発電を導入しており、年間約11,000tのGHG排出量削減と、エネルギーコストの削減を両立しています。また、経済産業省が「第6次エネルギー基本計画」でも拡大を掲げている洋上風力発電事業について、当社グループは三菱商事グループのコンソーシアムの協力企業として「秋田県沖および千葉県沖における洋上風力発電事業」に参画しました。東北の復興支援などで培った地域貢献の知見を生かしながら、協業を進めていきます。

サプライヤーとの連携強化により持続可能な調達を推進

長期目標であるネットゼロの達成のためには、Scope3排出量の削減が重要かつ課題です。当社グループのバリューチェーンのGHG排出量の約80%がScope3であり、その削減では、当社グループ外部の多くのステークホルダーの協力が必要となります。当社グループとステークホルダーの両方にとって経済的価値と社会的価値を創出する機会でもあり、脱炭素社会の構築に向けてリーダーシップを取っていきたいと考えています。

当社グループのScope3では、原料・資材の製造に伴う排出が最も多く約60%を占めています。また、輸送や販売に伴う排出も大きな割合となっていますので、この3つのカテゴリーを重点カテゴリーと定めて取り組みを進めることにしています。Scope3削減には、「自社主体の削減」と「取引先の削減促進」という2つのアプローチを並行して取り、目標を達成していきます。

「取引先の削減促進」では、サプライヤーとのエンゲージメントを重視します。既に当社グループの方針を共有する説明会を開催しており、現在主要なサプライヤーにアンケートを実施して各社の削減計画と定量および定性の進捗状況の確認を進めています。今後、把握できたデータを元に低炭素な原料・資材の調達に向けた取り組みを検討していきます。気候変動をテーマとした定期的なコミュニケーションも実施していきます。

Scope3の削減は当社グループだけではなく社会全体の課題でもあることから、同業他社や各種業界団体などとも課題を共有し、協働で取り組むことのできる領域を明確化して進めていきたいと考えています。削減の取り組みがScope3排出量の算定で正しく反映できるように、算出データベースを変更し、正確なデータを収集するための外部プラットフォームの活用も検討していきます。

「自社主体の削減」では、容器包装を重点テーマとしています。世界にも類を見ない自社で容器包装の開発を行う研究所を持つ強みを生かした容器包装の軽量化と、使用済みの容器を再生した材料から製作する「持続可能な容器包装」の利用拡大の推進で、原料・資材の製造に伴うGHG排出量を削減します。輸送では、トラックドライバー不足等による「運べない」リスクも考慮した、生産と物流を統合的に最適運用する取り組みを推進するとともに、共同配送やモーダルシフトも継続します。

  • 図:バリューチェーンでのGHG排出

  • グラフ:Scope3重点ターゲットと排出割合

プロフィール

剱持 智

キリンホールディングス株式会社 
CSV戦略部 主務
入社後、キリンビール、キリンビバレッジの工場、本社にて設備改善や省エネ推進などを担当。2020年からキリングループ全体の気候変動対策の戦略策定・推進を担う。

※所属(内容)は掲載当時のものになります。

価値創造モデル

私たちキリングループは、新しい価値の創造を通じて社会課題を解決し、
「よろこびがつなぐ世界」を目指しています。

価値創造モデルは、キリングループの社会と価値を共創し持続的に成長するための仕組みであり、
持続的に循環することで事業成長と社会への価値提供が増幅していく構造を示しています。
この循環をより発展させ続けることで、お客様の幸せに貢献したいと考えています。