3.2 水資源への取り組み生産地の水源地保全

バリューチェーン上流の水資源問題の解決

キリングループは、バリューチェーン上流の農産物生産地の水問題解決の第一歩としてスリランカの紅茶農園内にある水源地保全活動を2018年から開始し、2020年末には目標としていた5カ所を大きく上回る13カ所の水源地を保全しました。水源地の近隣に住む1,750人に対して水源地保全の必要性を理解するための集合形式での研修を行い、加えて住民15,000人に水の保全と流域保護に関するパンフレットを配布して意識向上をはかっています。

  • スリランカ紅茶農園内水源地保全数の図

紅茶農園内の水源地保全活動

2017年に実施したバリューチェーン上の水リスク調査や2019年に実施したシナリオ分析では、気候変動による原料農産物生産地における水ストレスや洪水リスクが将来的に増大することが明らかとなっています。しかし、バリューチェーン上流の水資源問題への対応は容易ではありません。そこで、キリングループでは持続可能な農園認証取得支援を通じて現地の紅茶農園やNGOとも強いパートナーシップを築いているスリランカから、この問題の対応を開始し、知見の蓄積を図っています。
高地にあるスリランカの紅茶農園では、急峻な斜面に茶の木が植えられている場所がたくさんあります。そのような場所では、雨が降っても雨水は斜面を流れ落ちてしまうために涵養機能は高くないと言われていますが、地層などの条件が良いところでは、雨水が地中に浸透して紅茶農園の一角でたくさんの泉として湧き出ている場所があります。このような場所のことをマイクロ・ウォーターシェッドと呼びます。紅茶農園にあるマイクロ・ウォーターシェッドはスリランカの中心部の高地にあり、ほとんどの場合は沿岸部の都市に流れる河川の源流になっているために、面積は僅かですが貴重な水源地となっています。
毎年行っている現地での農園マネージャーとのエンゲージメントの中で、スリランカ政府がマイクロ・ウォーターシェッドの重要性を理解し保全管理するためのマッピング作業までは行ったものの、資金不足のために停滞していることがわかりました。そこで、認証取得支援先の紅茶農園と周辺地域の持続性をより高めるために、2018年から農園内の水源地保全活動を開始しました。
この活動では、農園のマイクロ・ウォーターシェッドがほかの目的に使用されないように柵で囲んで保全し、周りにその地域固有の在来種を植林します。これにより、単一栽培の紅茶農園に植生の多様性を与えるとともに、集中豪雨などで山の斜面から流出した土砂が水源地に流れ込むことを防ぎます。

  • マイクロ・ウォーターシェッドの仕組みの図

    マイクロ・ウォーターシェッドの仕組みの図

  • 紅茶農園内の小川

  • 柵で囲んだマイクロ・ウォーターシェッド

水を大切にする教育プログラム

スリランカの紅茶大農園は、イギリス統治時代のプランテーションの流れをくむため、今でも広大な茶園の中には茶栽培と関係のない人も多く住んでいます。彼らは、伝統的に茶畑として使っていない空き地を自分たちの生活のために利用することが認められてきたため、マイクロ・ウォーターシェッドについてもそれが水源地であるという認識をもつことなく、野菜畑や牧草地に転用したり、薪を取るために周りの木を伐採したりする例が多く見られます。そのため、単に周りを柵で囲っただけでは水源地を保全することはできず、そこが守るべき水源地であることを住民に教育することが必要です。
今回の取り組みでは、対象となる水源地周辺に住む住民に対して、水の大切さやマイクロ・ウォーターシェッドがどのような機能を持っているかなどを教える教育プログラムを実施しています。一部の農園では茶摘みさんの保育所や小学校のプログラムの中に組み込むなどの工夫もしています。