持続可能な水資源の利用生産地の水源地保全

バリューチェーン上流の水資源問題

キリングループは、バリューチェーン上流の原料農産物生産地における水問題解決の第一歩としてスリランカの紅茶農園内にある水源地の保全活動を2018年から開始しました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて活動には困難が伴いましたが、2021年末で12カ所の保全を完了し、さらに2カ所で保全活動を実施中です。水源地の近隣に住む1,750人に対して水源地保全の必要性を理解するための集合形式での研修を行い、加えて住民15,000人に水の保全と流域保護に関するパンフレットを配布して意識向上をはかっています。

紅茶農園内の水源地保全活動

2017年に実施したバリューチェーン上流の水リスク・水ストレス調査や2019年に実施したシナリオ分析では、気候変動による原料農産物生産地における渇水や洪水リスクが将来的に増大することが明らかとなっています。バリューチェーン上流の水資源問題への対応は容易ではないため、キリングループでは持続可能な農園認証取得支援を通じて現地の紅茶農園やNGOとも強いパートナーシップを築いているスリランカから、この問題の対応を開始し、知見の蓄積を図っています。
スリランカの高地にある紅茶農園では、急峻な斜面に茶の木が植えられている場所がたくさんあります。そのような場所では、雨が降っても雨水は斜面を流れ落ちるため、涵養機能は高くないといわれていますが、地層などの条件が良いところでは、雨水が地中に浸透して紅茶農園の一角で泉として湧き出ています。このような泉のことをマイクロ・ウォーターシェッドと呼びます。紅茶農園にあるマイクロ・ウォーターシェッドはスリランカ中心部の高地にあり、ほとんどの場合は沿岸部の都市に流れる河川の源流になっているため、面積はわずかですが貴重な水源地となっています。
毎年行っている現地での農園マネージャーとのエンゲージメントの中で、スリランカ政府がマイクロ・ウォーターシェッドの重要性を理解し保全・管理するためのマッピング作業までは行ったものの、資金不足のために停滞していることが分かりました。
そこで、認証取得支援先の紅茶農園と周辺地域の持続性をより高めるために、2018年から農園内の水源地保全活動を開始しました。
この活動では、農園のマイクロ・ウォーターシェッドが他の目的に使用されないように柵で囲んで保全し、周囲にその地域固有の在来種を植林します。これにより、単一栽培の紅茶農園に植生の多様性を与えるとともに、集中豪雨などで山の斜面から流出した土砂が水源地に流れ込むことを防ぎます。

  • 急斜面に植えられている茶の木

  • 柵で囲んだマイクロ・ウォーターシェッド

  • 紅茶農園内の小川

水を大切にする教育プログラム

スリランカの紅茶大農園は、イギリス統治時代のプランテーションの流れをくむため、今でも広大な茶園の中に、茶栽培と関係のない人も多く住んでいます。彼らは、伝統的に茶畑として使っていない空き地を自分たちの生活のために利用することが認められてきたため、マイクロ・ウォーターシェッドについてもそれが水源地であるという認識をもつことなく、野菜畑や牧草地への転用や、周りの木を薪を取るために伐採する例が多く見られます。そのため、単に周りを柵で囲っただけでは水源地を保全することはできず、そこが守るべき水源地であることを住民に教育することが必要です。
キリングループは、対象となる水源地周辺に住む住民に対して、水の大切さやマイクロ・ウォーターシェッドがどのような機能を持っているかなどを教える教育プログラムを提供しています。
一部の農園では茶摘みさんの保育所や小学校のプログラムの中に組み込むなどの工夫もしています。

  • 図:水の大切さを学ぶ教育対象住民数

  • 水教育用のチラシ

節水型農業への貢献

キリンが植物大量増殖技術の実用化に向けて開発した袋培養型技術は、節水型農業への応用が期待されます。
樹脂フィルム製の袋型培養槽は、小型の袋の内部で植物の生育に必要な養分を含んだ溶液に通気をしながら植物を増殖させるため、土壌栽培よりも水を有効利用することが可能です。そのため、例えば乾燥地帯での栽培へ応用できる可能性があります。

※ 上記情報は「キリングループ環境報告書2022」の開示内容を転載したものであり2022年6月末現在の情報です。